紙おむつにインフラ…ASEANで「不織布」生産拡大はいつまで続くか

文=峯岸 研一  16年末には日系3グループ合わせ年産能力10万トン超え

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タイ旭化成グループ AKST
 タイを中心に東南アジア諸国連合(ASEAN)で日系企業の不織布事業が拡大している。主力のポリプロピレン・スパンボンド(PP・SB)は二社が増能力中で、2016年末にはASEANにおける年間生産能力が従来から約60%増と10万トンを上回る。拡大はPP・SBだけでなくポリエステル・スパンボンド(SB)やサーマルボンドなどにも広がっている。

 フル稼働もさらなる能力増強待ったなし

 ASEANの経済成長による生活レベルの向上にで、紙おむつや生理用品など生活資材向け、空港や道路、鉄道などのインフラ整備によるジオテキスタイル向けの需要が増加していることが背景にある。また、タイやインドネシアはEPA(経済連携協定)による関税優遇措置を活用した「対日オペレーション」の拡大も稼働率を押し上げている。

 「フル生産が続いており、日系企業を中心とした既存顧客への供給で手一杯の状態」(MHM・石井浩社長)、「年内に新ラインが稼働しても、フル稼動が続く見込み」(AKST・吉岡亮二社長)と、現地法人のトップが語るように、更なる能力増強が予想される。
 
 高齢化による大人向け紙おむつの普及も進む

 特に不織布の生産拡大の動きは紙おむつ向けの需要増が大きい。ASEANでトップシエアを占めるユニチャームの予測によれば、新生児の紙おむつ使用率は、日本がほぼ100%、これに対してタイは52%、インドネシア41%。使用枚数で年率10%を大きく上回る伸びを予測する。また、65歳以上の高齢化率は、2030年には2015年と比較してタイが1.9倍、インドネシア2倍、ベトナム2.1倍になる見込み。高齢化による大人向け紙おむつの普及も見逃せない。
 
 そのような状況を踏まえ旭化成せんいは、中国を含めたアジア地域における紙おむつの需要を、2012年の300億枚(子供290億枚、大人10億枚)から、2015年に600億枚(子供500億枚、大人100億枚)、2020年に900億枚(子供750億枚、子供150億枚)と予想。「2012年に算出した数値だが、ほぼ予想した水準で推移している」(吉岡AKST社長)という。
 
 着用枚数の増加とともに要求性能も高まる

 紙おむつは、着用枚数の増加とともに要求性能が高まり、紙おむつメーカーは薄地化や機能向上に力を入れている。要求性能は漏れ防止から表面のドライ性や肌触りの柔らかさなどの着用時の快適性が求められる。そこで使用部材は「防水性の向上」「保水性の向上」「吸水性の向上」「低伸縮性の維持」「軽量化」など多様な機能が欠かせない。

 そのなかでもPP・SBは、安定した原料確保と品質向上もあり、当初のサイドギャザーから、現在ではバックシート、さらに直接肌に接するトップシートへ採用範囲が広がっている。

 三井化学グループはPP・SBと防水シート、旭化成グループはスパンデックスとのセットでの提案も功を奏している。PP・SBは、旭化成グループのアサヒカセイ・スパンボンド・タイランド(AKST)が年産2万トンを増設中で、今年中に既存プラントの年産2万トンと合わせて倍増させる。三井化学グループのミツイ・ハイマージン・マテリアル・タイランド(MHM)は年産3万トンがフル生産を続けている。

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明豊
デジタルメディア局
局長

ファシリテーターの峯岸さんのレポート。日本の繊維業界でも数少ないグローバルで戦える不織布。現地取材などでリアルな数字が書かれています。

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