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半導体「世界大再編」に日本は乗り遅れてしまうのか

渦中の東芝、出口戦略を探すルネサス、そして製造装置はどう動く?

有力アナリスト3人が読む「これから」


 ●ガートナージャパン リサーチ部門主席アナリスト・山地正恒氏
 「市場成長鈍化を背景に」

 半導体メーカーの再編が加速している背景にあるのは、シンプルに言えば市場成長の鈍化だ。パソコンやスマートフォンの伸びの鈍化に加え、産業機器や自動車の電装化も進んできており、開拓すべきフロンティアがなくなってきた。

 すでに半導体メーカーやファウンドリー(半導体受託製造企業)、装置メーカー、サプライヤーそれぞれのレイヤー(階層)で寡占化が進んでいる。プレーヤーが減る中で、主導的な半導体メーカーが規模を拡大することで成長を継続しようと積極的にM&A(合併・買収)を仕掛けている。

 実は当社では2010年頃に「今後10年間で半導体メーカーの数が3分の1になる」との予想を出した。ここに来て、その予想に沿った動きがより一層顕著になってきた。20年まであと5年。M&Aは続くだろう。
 
 ●IHSグローバル 主席アナリスト・南川明氏
 「200mm工場、日本の強み」

 IoT時代に需要が高まるセンサーやアナログ半導体、パワー半導体は、多品種少量生産が特徴。このため大口径の300ミリメートルウエハーではなく、200ミリメートルウエハーでの生産が適している。日本の半導体工場における200ミリメートルウエハーの生産能力は世界一だ。

 また車関連や、産業機器関連で世界的に強いメーカーが日本に本拠を構えており、日本で半導体をつくるメリットは大きいと言える。日本の半導体メーカーは、こうした強みを生かし業界再編に対応していくことが重要だ。

 一方、中国の半導体産業の今後は気になるところだ。中国政府は本気でM&Aに取り組む姿勢で、その対象には日本企業も含まれている。日本に半導体産業を残し、さらにその競争力を高める意識を持ちながら、中国企業を含む外資との提携戦略を練っていくことが必要だ。
 
 ●ガートナージャパン リサーチ部門バイスプレジデント・小川貴史氏
 「製造装置、提案力カギ」

 半導体メーカーの寡占化が進んだことなどにより、半導体製造装置市場は、過去15年間でほとんど成長していない。メモリーの3D(3次元)構造化などの新技術や、IoTなど新たな需要を生み出す要素はあるが、今後も市場規模は良くて微増に留まるだろう。

 半導体メーカーの大型再編が、装置メーカーにどう影響を与えるのかを読むのは難しい。足りない技術を補完し合う提携は十分に起こり得る。一方で顧客である半導体メーカーにとって、装置メーカーの規模拡大は不都合な面もあり、それが再編を阻害する要因になり得るからだ。

 日本の装置メーカーについては、特定の工程では強みを発揮しているが、複数工程をカバーして顧客に提案できる総合力は不十分。勝ち残りには、この部分の競争力を高めることが重要な要素の一つになってくるだろう。
 (文=後藤信之)
日刊工業新聞2015年08月14日 電機・電子部品・情報・通信面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
やはり世界の視点でみると、カギは中国になるだろう。日本は「対中国」になると政・官がとても敏感になる。ルネサスの再建に官民ファンドの産業革新機構が乗りだしたのも、自動車向けマイコンの技術が中国に流れるのを阻止するためだった。同じ革新機構が株式を売却したフォークリフトのユニキャリアの例をみても出口戦略はいろいろと制約が出てくる。 東芝はディスクリートとシステムLSIは買い手が見つかればいつ切り出されてもおかしくない。巨額の投資が必要なNANDフラッシュメモリーは東芝は選択を迫られる。本体からメモリー事業を分社し外部資本を入れるか、東芝自身がエクイティファイナンスをやるのか。

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