熾烈な「携帯ポイント」競争、顧客をつなぎとめるサービスは何だ?

パートナーと連携し基盤強化を急ぐが…

 携帯電話大手は自社ポイントサービスを軸とした経済圏の拡充で顧客基盤の強化を急ぐ。携帯電話サービスに加え、ネット通販や資産運用、金融などパートナー企業の各種サービスをポイント会員基盤経由で提供することにより、顧客ごとに最適なサービスを提案し、自社の経済圏に取り込む狙いだ。

 「ドコモの会員基盤をベースに、顧客一人ひとりを理解し、魅力的なコンテンツを届けたい」―。NTTドコモの吉沢和弘社長は7日、米ディズニー4ブランドの映像作品をスマートフォンなどで見放題となる新サービスの発表会で、自社ポイント会員基盤「dアカウント」の狙いをこう語った。視聴するための認証や決済基盤にはdアカウントを用いる。

 こうしたdアカウントでドコモのポイント「dポイント」をためられる提携先は18年末時点で380と前年同期比で倍増、dポイントが使える店舗も全国6万8600店に増えた。利用先が増えたことで会員数も同451万人増の6883万人と日本最大級のポイント会員サービスに成長した。

 コンビニやドラッグストアなど日常生活のあらゆる場所でdポイントが使えるようになった結果、ポイント還元率が高い自社クレジットカード「dカード」を使う自社決済が増え、顧客基盤に集まる情報もより精密化。集めたデータを基に、ドコモやポイント加盟店が顧客の住む地域や属性に最適なマーケティングを行い、売り上げを増やす経済圏ができつつある。
 
 ソフトバンクも4700万の月間ログインIDを持つヤフーとの連携を強化。ソフトバンクの利用者はヤフーの有料サービス「ヤフープレミアム」を無料で利用できるようにしたこともあり、「(18年末時点の)ヤフーIDとの連携数は前年同期比26%増の1399万件に増えた」(宮内謙社長)。ソフトバンクとヤフーの利用情報をもと、顧客ごとに最適なサービスを提供できる体制作りを急ぐ。

 携帯電話大手が経済圏の拡充を急ぐ理由は、政府による携帯電話料金引き下げ圧力に伴う新たな収益源の確保のためだ。自社ポイント基盤を軸とした各種サービスの拡充が必須となっている。

 もう一つは今秋に携帯電話事業へ参入する楽天の存在だ。1億人以上の会員数を基盤に参入する楽天は、既存の携帯各社にとって大きな脅威だ。携帯電話大手のポイント会員数は今後の国内携帯電話大手の競争力を占う指標にもなる。

 ただ、KDDIは楽天に通信設備を貸す一方、楽天の物流や決済インフラを借りることも決めるなど、提携も盛んだ。必ずしも競合だけではなく、各社の戦略が問われている。

 共通ポイントで日本有数の巨大経済圏を構築した楽天。1億人を超える巨大な顧客基盤を背景に、電子商取引サイト(EC)「楽天市場」や格安スマートフォンサービス「楽天モバイル」、金融、旅行など幅広い事業を提供する。

 楽天経済圏の中核を担う楽天市場は、ユーザーの購入金額に応じて1%の楽天ポイントを付与する。そのポイントを使って楽天市場で買い物したり、グループが展開する多様なサービスを利用したりできるため、利用者を経済圏にとどめることに成功している。

 特にその効果を発揮するのは楽天モバイルだ。価格競争が激しい格安スマホ市場では、料金以外の差別化が需要。そんな中、楽天ポイントとの連携は大きな武器だ。

 また、外部企業とのポイント連携も積極的だ。1月、飲食店を運営する幸楽苑ホールディングスと連携を発表。来店客は、幸楽苑全517店舗で楽天ポイントをためたり使ったりできる。楽天の三木谷浩史会長兼社長は、「新しい食のサービスが2社で展開できる」と期待を語った。

 楽天は全国に店舗を構える企業とポイント連携を進めることで、リアルとネットの融合を加速させる狙いもある。楽天経済圏はますます盤石なものになりそうだ。
ドコモは「dポイント」でサービス拡充と顧客取り込みを加速する

(文=水嶋真人、大城蕗子)

日刊工業新聞2019年3月21日の記事から抜粋

  

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