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韓国造船の再編、それでも拭えぬ不信感

過剰設備の削減を進めよ
韓国造船の再編、それでも拭えぬ不信感

韓国・釜山の造船所(写真はイメージ)

 造船世界最大手の現代重工業が同3位の大宇造船海洋を一部条件付きで買収することで基本合意した。3月にも最終合意する見通し。断トツ規模の造船グループが誕生する。新造船需要が依然低迷する中、経済合理性に基づいた過剰設備の削減や重複組織の解消を進め、市場安定化につながることを期待する。

 計画では、現代重工ホールディングスが中間持ち株会社を設立し、大宇造船の株式約56%を保有する政府系金融機関の韓国産業銀行が新会社に大宇造船株を譲渡。代わりに新会社の株式を受け取る。韓国造船業は世界2位のサムスン重工業と現代重工グループの2強体制となる。

 世界の新造船市場はリーマン・ショック後の発注の落ち込みと海上荷動きの低迷により、建造能力過剰の状況だ。需給ギャップを抱えたまま、中国、韓国、日本がたたき合いを続けた結果、各社が適正利益を得られないほどの低船価に苦しむ。

 経営が悪化した大宇造船には1兆円を超える公的金融支援がつぎ込まれた。黒字化を果たしたのは政府支援があったからで、設備統廃合など抜本対策は置き去りだ。現代重工にとっても、安値攻勢を再開した大宇造船は手を焼いていたはずだ。

 大宇造船を取り込み、自らの手でリストラを進め、過当競争を回避できれば、大型商談が控える液化天然ガス(LNG)運搬船の受注などをテコに業績回復の糸口を見いだしやすい。当然、資材調達など規模のメリットも享受できる。

 ただ、韓国は労働組合が強い。大宇造船、現代重工ともこの数年で大規模な人員削減を進めてきただけに、労組は雇用不安を理由に、統合に反対姿勢を示す。一足飛びに設備統廃合に踏み切れるほど甘くない。過剰設備を温存したままでは、むしろ船価を押し下げかねない。

 日本は昨秋、大宇造船への公的支援を違反として、世界貿易機関(WTO)協定に基づく2国間協議を要請した。これが韓国の造船再編機運を高めた。日本は引き続き、需給不均衡の是正を訴え、韓国や中国の過剰設備削減を求めていくべきだ。
日刊工業新聞2019年2月28日

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