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親族外承継という選択肢「事業引継ぎ」と向き合う

後継者不在による廃業防げ
親族外承継という選択肢「事業引継ぎ」と向き合う

7月末に都内で開かれた「事業引継ぎ全国セミナー」には多くの関係者が来場


「あと5年、3年早く相談に来てくれていれば」(東京都事業引継ぎ支援センター・玉置氏)


 
経済産業省から中小企業専門のM&A支援会社を経て、東京都事業引継ぎ支援センターに転じた玉置恵一氏は早期の対策の重要性を訴える。

 あと5年、3年早く相談に来てくれていれば、と思う残念なケースが多々、見受けられる。中長期的な視点に立って事業の強みや経営を見つめ直せば、円滑に引き継ぐ方策が導き出せたのにと。

 経営者の最後の仕事は後継者探しと認識し、まずは頭の整理や「気づき」を得てもらうためだけでも構わないので最寄りの「事業引継ぎ支援センター」に足を運んでほしい。

 他社の経営資源を譲り受け事業を拡大したいと考える企業は案外多い事実にも目を向けてもらいたい。東京の事業引継ぎ支援センターの場合、譲り受け希望企業、すなわち買い手企業の半数弱を年商10億円超の企業が占める。このなかにはグローバル企業や東証1部上場企業もある。外部資源を活用し、新規事業を始めたいとのニーズがうかがえる。

 事業承継が成功しやすい企業にはいくつかの特徴がある。事業の強みが明確なことや財務内容が毀損していないことに加え、経営の「見える化」が図られているかもポイントとなる。とりわけ小規模企業の場合には社長への経営の依存度が高いため、経営者が交代すると、とたんに事業が回らなくなるケースが見受けられる。こうした事態に陥らない体制づくりも円滑な事業承継には必要だ。(談)
日刊工業新聞2015年08月10日 中小・ベンチャー・中小政策面
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
現経営者の「引退」を連想させる事業承継は、家族でもなかなか話題にできないとよく聞きます。東京都事業引継ぎ支援センターの玉置さんの言葉、「経営者の最後の仕事とは後継者探し」との指摘は印象的です。

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