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“安全運転”で動き出したテレマティクス保険!

「自動運転」責任の所在など課題残る
“安全運転”で動き出したテレマティクス保険!

ソニー損保は小型計測器を車内に設置し、運転特性を数字で測定


運転特性を自動車保険料に反映


2014年12月10日付


 損害保険大手が運転特性を自動車保険料に反映させる取り組みを進めている。ソニー損害保険は急発進などが少ないほど保険料をキャッシュバックする商品の販売を始めるほか、損保ジャパン日本興亜も情報通信技術を活用し、走行距離に応じて保険料を割り引くサービスを展開している。ハード機器や情報通信の進化により、ドライバーの実態に即した自動車保険料の仕組みづくりに向けて試行錯誤が続く。

 ソニー損保は自動車保険「やさしい運転キャッシュバック型」を開発した。車内に設置した小型計測器で運転特性を点数表示し、事故との因果関係が強い急発進や急ブレーキが少ないほど点数が高くなる。60点以上のスコア対象者は支払った保険料の一部がキャッシュバックされ、90点以上で最大20%が戻る。

 現在の保険料は等級制度に基づき、主に過去の事故歴の有無の申告で一律に決まる。事故が少なければ等級が上がり、保険料が安くなる仕組みだが、安全運転が保険料に反映されるのには時間がかかりがち。同社は「運転特性を反映させたより合理的な保険の仕組みをつくる」(安田和義自動車商品部長)ことを目的に、約6年の月日をかけて完成。2015年2月中旬にも販売を始める。

 情報通信技術(ICT)を活用した取り組みで先行するのは損保ジャパン日本興亜。日産自動車の電気自動車「リーフ」を対象に自動車保険「ドラログ」を13年から販売。車載情報システム「テレマティクス通信ユニット」を活用して走行データを計測、距離が短いほど保険料が割引される。

 走行中のデータは専用サイトにおいて、グラフなどで「見える化」される。このため、「保険料が高くなる顧客でも契約更改に応じるケースが多い」(水沼義尚自動車業務部商品企画グループ課長代理)という。

 ただ、各社にとってまだ実証の位置づけが強く、本格展開は先になりそう。普及への課題は多く、運転特性を把握したとしても、それに基づく保険料の割引制度を運転手が受け入れるかは別問題。仮に保険料が高くなる場合、運転手が納得できる理由を説明できないと結局は既存の自動車保険に落ち着いてしまう。ICTを活用すればシステム投資などの問題も浮上する。

 とはいえ、こうした新しい仕組みは保険料割引に限らず、新たな保険サービスにつながる可能性もある。このため研究開発の意味合いも込めた取り組みは続きそうだ。あいおいニッセイ同和損害保険はトヨタ自動車と連携し、トヨタのテレマティクス技術「ティーコネクト」を活用した自動車保険を15年に発売する計画。東京海上日動火災保険も次世代自動車に対応したタスクフォースを立ち上げ、調査・研究活動に着手している。
日刊工業新聞 2014年12月10日 金融面
中島賢一
中島賢一 Nakajima Kenichi
テレマティクス保険は保険料を抑えるだけでなく、安全運転を促すものとして非常によい仕組みだと思っています。すでに市場に出回っている車にも走行の評価が出るものも多く、私もこの数値を気にして運転するおかげで燃費よく走ることもできています。

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