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染めない白髪ケア、顧客開拓のカギはクラウドファンディング

NILの「SUNAバイオショット」、正確な情報を戦略立案に生かす
**新顧客層狙う
 NIL(神奈川県二宮町、佐藤幸蔵社長、046・240・8784)は、染めない白髪ケアエッセンス「SUNAバイオショット」のテストマーケティングにクラウドファンディングを活用している。既に販売している製品をリニューアルし、マクアケ(東京都渋谷区)が提供するクラウドファンディングサイトに公開。支援者を募りながら、購買層を分析している。正確な情報を武器に、顧客拡大を狙う。

 SUNAバイオショットは、毛根にあるメラノサイトを活性化させる成分を配合した白髪ケア製品。機能化ナノ粒子技術で、新発見の植物成分タラタンニンをナノ化し、毛根に入り込めるようにした。メラニンの生成を刺激することで、髪の毛を黒くする効果が期待できるという。当初は美容室から展開を始めたが、事業を大きくするために別の販売経路を模索した。

 佐藤社長は「化粧品のため、効果に関する広告宣伝文句が限られる。当社で電子商取引(EC)サイトを立ち上げて販売しているが、顧客の拡大には苦労している」と明かす。

 そこでクラウドファンディングを実施すると、現実に白髪ケアに興味を持つ層が判明した。従来同社では50―60代の女性がターゲットになるとみていた。しかし、実際には40代の、白髪になる前に対策したい層のニーズが高かった。また染めずに白髪をケアしたい男性のニーズも高いことも分かった。
「SUNAバイオショット」内に配合した成分をナノ化したカプセル(イメージ図)

新手PRに成功


 さらに、同社のECサイトのみではアプローチできない層へのPRに成功しつつあるという。佐藤社長は「興味のある人だけが訪れるECサイトと違い、多くの人が訪れる。応援コメントからも、率直な意見を聞ける。マクアケの利用者は発信力が高い人も多い。顧客拡大に期待がもてる」と笑みを見せる。

 今後、地域性が読み取れれば、新聞広告の打ち出し方の参考にもしたいという。同社は、他の用途でも使用可能性がある成分の研究も進めている。まずはSUNAバイオショットを軌道にのせ、次の製品開発へとつなげたい考えだ。染めない新たな白髪ケアを普及させるべく、知名度向上に力を入れる。

有益な数字分析


 マクアケでは資金調達とともに、マーケティングもサポートする。実行者には「マクアケアナリティクス」が提供され、どのような層が興味を持ち支援しているか、数字で見られる仕組みだ。

 NILもこの分析を活用して販売戦略を練っている。正確な数字や細かい分布を見ることができるため、テストマーケティングには最適だという。

 資金調達の手段として一般的になりつつあるクラウドファンディングだが、近年は資金力に問題のない大手企業による活用事例も増えている。マーケティング手法としても、広がりをみせそうだ。
(文=門脇花梨)
日刊工業新聞2019年1月18日

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