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スタートアップ先進3市長が助言「モテる」「飲み会を開く」「市役所で浮く」施策

福岡・高島氏、横須賀・吉田氏、千葉・熊谷氏の本音トーク~ベンチャー政策カンファレンス2015より

血の通ったコミュニケーションから生まれるものがある


 ―3市長ともPR力がすごくあります。コツはなんですか。
 高島「ターゲットを明確にすることを意識している。今日は自治体の方々だから噛み砕く部分は噛み砕いていくし、議会の人に話すときは、既存の中小企業の対策が大事と言われると思うので、ベンチャーはどれだけ雇用を生み出す効果があるか、ということに絞って話すようにする。IT系に話すときは、うんちく系ではなくて、彼らに夢を持たせるようなことをポイントにしたり、誰が聞いてるのかを明確にする。スタートアップだからという話ではなくて、対外向けに発信する際には意識しています」

 ―トップ(首長)だけだと物事はなかなか動かない。熊谷さんは現場や周辺をどのように動かしているんですか。
 熊谷「(経済関連の部署は)庁内の人事でもどちらかというと、エースクラスが配属されてこなかった。なんでこんなに人材が少ないのか?ということを分析しながらのスタートでしたね。だからまずは攻める人材を配置した。私が繰り返し言ってきたのは『経済の人たちは市役所で浮くくらいじゃないとダメですよ』ということ。財務や企画や総務に止められるくらいの人たちじゃないと、スタートアップやベンチャー支援なんて成立しないので」

 「いろいろ問題が起きても、そんなに問題にしないようにしました。営業経験者を民間から入れたりもした。国からの出向でも、こういう分野でこういう人間が欲しいと要望もして、経済部に人材が集まるのに5年くらいかかりましたね。今は私からみても『これは大丈夫だな』というくらいの部署になった。めちゃくちゃ優秀な人というよりは、ものすごく積極的な人を入れていくということで、部署の雰囲気は変わっていったと思います」

 ―ベンチャーとあまり接点がないときに、最初の一歩としてベンチャーと付き合う深く付き合っていくコツは?
 吉田「飲み会だと思います。飲み会は大事ですね。ヨコスカバレーのメンバーとは定期ミーティングをした後に飲み会をしています。私たちは、あだ名で呼び合おうと決めています。私の場合は“ゆうじん”と言われていますし、外郭団体のホリゴメさんが“ゴメス”と言われていたり。ゴメスっぽくなるために髭を生やしているんです(笑)そういった血の通ったコミュニケーションから生まれるものが間違いなくあると思います」

 ―スタートアップ後はベンチャーに官公庁から仕事を発注してほしいという期待もあると思います。その辺りの考え方についてはどうですか。
 高島「トライアル発注というベンチャーの優れた商品に優先して発注するような制度を作ったり、サービスに関しても同じように行えるように変えました。特にベンチャーというのは、役所の人たちからみれば、これまでの実績とか、これくらいの規模の工事をしたとか、本来、行政が判断する要素、そういったものがないからベンチャーなので。同じ福岡市でも別の部署に行くと〇○年以上というしばりがある。今、市全体で浸透させようとしていますが、○○年以上がなくなっていけばよいと思っています」

 六本木の「アワバー」に通う職員は素晴らしい

 ―最後に一言、会場の皆さんにお願いします。熊谷さんから。
 熊谷「行政に入っていつも感じることは、例えば、文化系の団体に関してもクラシックな団体ばかりと向き合っている。新しい団体との付き合いを同時並行でやっていかないとすべての分野で変わっていかないと思います。それが一番大事なんじゃないかと思います」

 吉田「やっぱり首長が変わることが大事。それだけだと今日のセミナーの意味がくなるんですけど(笑)しかし、それでも首長の意識は大事だと思います。あと(職員の方々は)強力な味方を見つけることが大事。それが首長だったり、首長がダメだったら市議会だったり。もし行政がダメなら民間ややる気のある地域の若者とか、行政が介入しない自発的な運営もある。ぜひ強力な見方を見つけることを大事にしてもらいたいと思います」

 高島「地域にある基礎企業にもベンチャー企業は大きな影響があって、コラボすることが大事だと思います。基礎企業とベンチャー企業は関係がある。伝統産業も新しい切り口を提供することで変わる可能性がある。いまそれぞれの地域にあるものが輝く可能性があるのがスタートアップの力だと思います。そういう触媒、新しいパッケージというものがスタートアップであり、新しいアイデアの切り口を持っているのがベンチャーだということです」

 「六本木にスタートアップ界隈の人が集まる『アワバー』というお店があって、そこに福岡市の職員も混じっていたりする。首長は動かなくても一生懸命関わっている職員を見て、素晴らしいと思った。そういう職員を見て、その地域に行こうかな、という起業家もいるのではないかと思います」

 ―三人の方の話を参考にアクションに起こして頂きたいと思います。今日はありがとうございました。
ニュースイッチオリジナル
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
地方自治体の関係者など300人を超える人が参加、地方創生への熱量が伝わってきた。一方で、スタートアップやベンチャー支援に限らず、自らプランやアイデア、それを動かす人脈などを持っている自治体はまだまだ少ないのが実情。なぜそこの地域じゃないといけないのか?地域の文化を経済に結びつけていことかが、一つカギのような気がする。

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