49・6%がすでに内定取得!来春入社の新卒「短期決戦」、中小に試練
魅力訴求、採用支援も工夫
学生を惹きつける中小企業
事例1:アクロナイネン 子会社の社長目指せ
アクロナイネン(和歌山市、勝本僖一社長、073・424・8101)は20年以上、定期採用を続けている。求めるのはチャレンジ精神と独自の発想を持つ人材。大学生向けの会社説明会では「子会社の社長を目指して入ってきてほしい」と呼びかける。
小型エンジン用遠心クラッチや鋳造部品をメーンに、樹脂製品、タッチパネルなどの製造を手がける。中国とタイに工場を持ち、異業種のグループ会社を合わせた事業領域は10分野。グループ全体で従業員約1000人、売上高は100億円を超える。「東京や大阪など大都市圏の学生には海外勤務も魅力的に捉えられる」(勝本社長)。リーマン・ショック後、東京での会社説明会には150人以上の学生が集まったこともあるという。
「さまざまな経験ができることが魅力なのか、離職率も低い」と勝本社長。同社は15年度に7、8人の新卒採用を狙う。ただ安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」以降、学生の目が地方企業に向かなくなり、大都市圏での学生集めは苦戦が続く。勝本社長は「各方面でアピールを強め、いい人材を確保していきたい」としている。
事例2:西部技研 人材生かす企業風土
西部技研(福岡県古賀市、隈扶三郎社長、092・942・3511)は、16年春入社6人の採用を予定している。15年春には4人の大学生と大学院生を採用。地場の有力中堅企業として、九州工業大学、熊本大学、北九州市立大学、福岡女子大学など国公立を含めた優良校から順調に採用。海外展開やダイバーシティー(多様性)が学生を引きつけている。
同社はデシカント除湿機や熱交換器などを製造販売する産業用空調機器メーカー。スウェーデンと米国、中国に製造販売子会社を持つなどグローバル化を進めており、18年12月期には連結売上高85億円を目指す。これまで理系中心の採用を進めてきたが「最近は文系も採用し、男女比も半々を意識している」(隈社長)。全国に販路が広がり、サービス人材が欠かせない。また海外の現地法人に人員を派遣する制度を始めるなど「転勤を希望する人材」(同)も必要だ。
隈社長は向上心、チャレンジ精神旺盛な人材を求めている。その上で「リケジョも増やしたい。結婚、出産、育児とライフイベントを経ても退社せず、復職できるよう社内を活性化し、会社の風土を変えている」最中だ。
【東商、採用支援に工夫 1、2年生対象に「会社ツアー」】
中小企業の人材不足は深刻。新卒採用をしたくとも大企業志向の強い学生はそっぽを向きがち。このままでは中小企業の衰退に拍車がかかり、日本経済の衰退につながる。そこで東京商工会議所は、中小企業の採用活動支援に工夫を凝らしている。
9月に大学1、2年生を対象に中小企業の「会社ツアー」や「仕事観察」などができる「東商リレーションプログラム」を開始する予定だ。16年4月、17年4月入社の採用には間に合わないが、早くから中小企業に足を運んでもらい、従業員、経営者と触れ合うことで中小企業の良さを伝えようという狙いだ。
当初、5大学の1年生約80人を会員企業9社で受け入れる。学生の休暇期間を中心に年2回実施する方針で順次、参加企業、大学を拡充する。会社ツアーは1―3時間かけて、会社内を巡り歩いたり、課題解決型のワークショップを行ったりする。仕事観察は4―8時間をかけ、1人の職業人について回ることで仕事をリアルに理解させる。
また、1都8県の101商工会議所と連携し、16年春に採用を予定している中小企業を首都圏の大学生に紹介する「採用情報メール配信サービス」を7月に始めた。大学生1万人、首都圏100校以上の大学キャリアセンターなどに情報を提供している。
日刊工業新聞2015年08月05日深層断面