航空機エンジンで成長を目指すIHI、立ちはだかる壁とは?
遅れるコストダウン、供給元が限られる特殊素材の需給逼迫
満岡次郎社長に成長戦略を聞く。
―米中貿易摩擦の影響は。
「世界全体でのリスクを想定し、自動車用ターボチャージャー(過給器)事業で多少、計画見直しの必要性を感じ始めた。必要であれば計画を見直す。一段と柔軟性の高いサプライチェーンを構築する」
―過給器事業における電気自動車(EV)シフトの影響は。
「増産トレンドは2025年頃まで続く。19年度からの次期中期経営計画でも成長投資を続ける。20年代後半に向けて何を出すか。電動コンポーネントや制御技術で完成車メーカーとの協働体制を強化するべく、話し合いを進めている」
―苦戦が続いた北米の液化天然ガス(LNG)プラント工事の状況は。
「余裕があるとは言い難い。北米子会社ではリスクの大きいEPC(設計・調達・建設)の受注を止めた。グループ全体の中で北米市場をどう位置付けるか、再整理が必要だ」
―主力の航空機エンジン事業でコストダウンが遅れています。
「供給元が限られる精密鋳造や鍛造など特殊素材の需給が逼迫(ひっぱく)して、価格改定要求も強い。生産性向上を進めているが、本来の収益力が発揮できる形になってない。ただ、調達影響を受けながらも、コストダウンはかなりのペースで進んでいる」
―グループのジャパンマリンユナイテッド(横浜市西区)の損益改善は。
「単年度黒字は必達目標。為替に左右されない構造にすることが命題だ。円高の言い訳は一切聞きたくない。円高を想定し中長期の姿を描いてもらいたい。あらゆる選択肢を持って検討するべきだ」
―石炭火力発電に向かい風が強いですが、従来のボイラを中心としたエネルギー事業改革の方向性は。
「エネルギーミックスを考えれば石炭火力は必要な技術。いかに環境に優しい形で使っていけるかだ。アフターサービス需要を取り込むことで事業継続性はある。海外では大型プラントから分散発電へとニーズが移り、再生可能エネルギーとの組み合わせがカギだ」
―19年3月期は過去最高益を予想します。来期からの新中計の考え方は。
「選択と集中によりSBU(事業単位)の数は減った。次は経営資源を投下した『集中』事業の“稼ぐ力”にこだわりたい。筋肉質で柔軟な経営基盤の構築を一段と進めたい」
―中期的な投資の規模感は。建設大手の伊アスタルディと出資交渉を進めています。
「現中計では総額4000億円の投融資枠を確保した。これまで航空機事業を中心に設備投資が膨らんできたが、M&A(合併・買収)にもチャレンジしたい。アスタルディとは出資交渉に入ったが、相手が民事再生を申し立て、白紙の状態から評価し直している」
【記者の目】
北米のプラント大型工事が一段落すれば突発的な損失リスクは限られる。ポートフォリオマネジメントによる選択と集中にも一定のめどをつけ、業績は好調だ。ただ、資源・エネルギー・環境事業の受注にブレーキがかかり、全社の売上高成長力に不安があるのも事実。充実した技術基盤を生かし、航空機エンジン事業に次ぐ、新たな成長の芽を育てたい。
(日刊工業新聞・鈴木真央)
―米中貿易摩擦の影響は。
「世界全体でのリスクを想定し、自動車用ターボチャージャー(過給器)事業で多少、計画見直しの必要性を感じ始めた。必要であれば計画を見直す。一段と柔軟性の高いサプライチェーンを構築する」
―過給器事業における電気自動車(EV)シフトの影響は。
「増産トレンドは2025年頃まで続く。19年度からの次期中期経営計画でも成長投資を続ける。20年代後半に向けて何を出すか。電動コンポーネントや制御技術で完成車メーカーとの協働体制を強化するべく、話し合いを進めている」
―苦戦が続いた北米の液化天然ガス(LNG)プラント工事の状況は。
「余裕があるとは言い難い。北米子会社ではリスクの大きいEPC(設計・調達・建設)の受注を止めた。グループ全体の中で北米市場をどう位置付けるか、再整理が必要だ」
―主力の航空機エンジン事業でコストダウンが遅れています。
「供給元が限られる精密鋳造や鍛造など特殊素材の需給が逼迫(ひっぱく)して、価格改定要求も強い。生産性向上を進めているが、本来の収益力が発揮できる形になってない。ただ、調達影響を受けながらも、コストダウンはかなりのペースで進んでいる」
―グループのジャパンマリンユナイテッド(横浜市西区)の損益改善は。
「単年度黒字は必達目標。為替に左右されない構造にすることが命題だ。円高の言い訳は一切聞きたくない。円高を想定し中長期の姿を描いてもらいたい。あらゆる選択肢を持って検討するべきだ」
―石炭火力発電に向かい風が強いですが、従来のボイラを中心としたエネルギー事業改革の方向性は。
「エネルギーミックスを考えれば石炭火力は必要な技術。いかに環境に優しい形で使っていけるかだ。アフターサービス需要を取り込むことで事業継続性はある。海外では大型プラントから分散発電へとニーズが移り、再生可能エネルギーとの組み合わせがカギだ」
―19年3月期は過去最高益を予想します。来期からの新中計の考え方は。
「選択と集中によりSBU(事業単位)の数は減った。次は経営資源を投下した『集中』事業の“稼ぐ力”にこだわりたい。筋肉質で柔軟な経営基盤の構築を一段と進めたい」
―中期的な投資の規模感は。建設大手の伊アスタルディと出資交渉を進めています。
「現中計では総額4000億円の投融資枠を確保した。これまで航空機事業を中心に設備投資が膨らんできたが、M&A(合併・買収)にもチャレンジしたい。アスタルディとは出資交渉に入ったが、相手が民事再生を申し立て、白紙の状態から評価し直している」
【記者の目】
北米のプラント大型工事が一段落すれば突発的な損失リスクは限られる。ポートフォリオマネジメントによる選択と集中にも一定のめどをつけ、業績は好調だ。ただ、資源・エネルギー・環境事業の受注にブレーキがかかり、全社の売上高成長力に不安があるのも事実。充実した技術基盤を生かし、航空機エンジン事業に次ぐ、新たな成長の芽を育てたい。
(日刊工業新聞・鈴木真央)
日刊工業新聞2019年1月9日