「オウンドメディア」でSE改革!

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富士通アジャイル・ラボは気晴らしに卓球ができるなど自由な雰囲気が持ち味
 デジタル変革に向けて、企業文化を変える―。具体策としてオープンイノベーションなどの共創活動が脚光を浴びるが、市場変化の波は大きく、かけ声や題目を並べただけでは淘汰(とうた)の波に飲み込まれる。デジタル変革を支援する側のIT・情報サービス各社もまた然り。「紺屋(こうや)の白袴(しろばかま)」ではユーザー企業から相手にされず、取り残されてしまう。自らをどう変えるのかが問われている。

ベンダー寄り


 企業文化を変革するため、欧米企業はM&A(合併・買収)で新しい血を取り込むことが多い。直近では米IBMが米レッドハッドを買収。約3兆8000億円を投じ、企業文化の変革を含めて大きな賭に打って出た。日本勢もM&Aに意欲的だが、ビジネスの本丸は一足飛びには変わらず、M&Aのような荒療治とともに全社レベルでの地道な意識改革がカギとなる。「我々が変わらないと日本のデジタル変革は立ち遅れてしまう」。富士通の柴崎辰彦デジタルフロント事業本部長はITベンダーとしての立ち位置を強調する。

 欧米ではソフトウエア開発者やシステムエンジニア(SE)の多くをユーザー企業が抱えている。これに対し日本のIT人材はベンダー側に寄っている。「ベンダーが旧態依然としたままでは、デジタル改革は進まない」(柴崎本部長)というわけだ。

 富士通は経営のスピードを早めるため、1日付で代表取締役を除く役員を57人から24人に減らし新体制を始動。国内3万人に上るSE軍団の改革の取り組みに営業なども合流し、「ボトムアップの改革と経営主導のトップダウンの改革のベクトルが合致してきた」(同)という。

SEが情報発信


 SE改革は2012年に立ち上げたオウンドメディア「明日のコミュニティラボ(明日ラボ)」が根っこにある。サイト上には自社製品やサービスを一切宣伝せず、現場のSEが自らの問題意識に基づいて調べた情報を発信することに徹した。当時はSEの新しい人材像として「SE4・0」を打ち上げたころ。明日ラボを通じたメッセージは「社外ではなく、インナー(社内向け)ブランディングを意識していた」と柴崎本部長は打ち明ける。明日ラボの活動は収益に直接的には結びつかない。社内から「謎めいた活動」とみられるなど苦労も多かった。だが、もともとグローバルサービスインテグレーション(GSI)部門長の肝いりでスタートした取り組みであり、戦略は時代を先取りしていた。

 転換点は15年に全社戦略として掲げた「ナレッジ(知見・経験)インテグレーション」。さまざまな業界で活躍するSEや営業が持つナレッジをつなぎ、客先と一緒に新しい価値を生み出すことを強みとして打ち出した。社内向けには「ナレッジインテグレーション・フォー・ビッグチェンジ」を合言葉に、顧客企業や利用者らとアイデアを出し合いながら新しいビジネスやサービスを生み出す“共創人材”の育成に力を注いできた。

 一連の活動のコアとなってきたのが明日ラボ。客先のみならず競合先のITベンダーなどもビジネスのネタ探しにアクセスするなどオウンドメディアとしての新天地を開いた。 市場でも追い風が吹く。ユーザーから「基幹系システムでもアジャイルをやりたい」といった要望もある。柴崎本部長は「一連の取り組みが直線としてつながり、当社の屋台骨であるGSIの中期戦略そのものになっている」と語る。

采配どう振るう


 富士通は18年にPivotalジャパン(東京都港区)と提携し、アジャイル開発を支援する共創拠点「アジャイル・ラボ」を開設した。ラボでの取り組みをショーケースとして、どう成果に結び付けるかは今後の課題だ。1日付でSE全体を束ねる立場となった木脇秀己執行役員常務は社会インフラや金融業向けで実績を持つ。共創への取り組みとの両建てでどう采配を振るうかが注目される。

日刊工業新聞2019年1月8日

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