お茶だけじゃない!静岡県で機能性食品が次々と生まれている
機能性が高い製品の開発、海外市場の開拓を目指す
【事例】紅茶色素の分離・精製技術を確立
焼津水産化学工業は静岡県の「フーズ・サイエンスヒルズプロジェクト」を通じて、紅茶に含まれる赤色色素「テアフラビン」の新たな生理機能を明らかにした。さらにテアフラビンの分離・精製技術を確立。飲料原料として4月に発売した。
テアフラビンはカテキン2分子から生合成されるポリフェノールの一種。同社は2009―13年に科学技術振興機構(JST)から補助金を受け、静岡県立大学、静岡大学、静岡県工業技術研究所と共同研究を始めた。
その結果、インフルエンザウイルスを不活性化する効果が通常のカテキンの15倍以上あると世界で初めて明らかにした。
さらにカテキン類には認められない血流改善効果や、虫歯原因菌・歯周病原菌に対してカテキンよりも強い抗菌作用もあることがわかった。
焼津水産化学工業はテアフラビンを飲料原料として販売するほか、含浸させたマスクを8月に県庁の売店などで発売。5年後にマスクの売上高5億円を目指す。今後は6月に「フーズ・サイエンスセンター」に設置した「機能性素材活用研究会」を通じて「ユーザーと一緒に用途開発したい」(山田潤取締役)としている。
静岡県経済産業部長・篠原清志氏/世界で売れるモノづくりへ
「フーズ・サイエンスヒルズプロジェクト」の取り組みについて静岡県の篠原清志経済産業部長に聞いた。
―プロジェクトの狙いは。
「静岡県中部地区にには食品関連の産業集積がある。地域の潜在能力を生かして、機能性成分を利用した食品の開発を目指している。県は成長産業の育成に力を入れているが、既存産業の高度化も重要だ。このプロジェクトを通じて県民の健康増進と地域経済の振興を進める」
―第2次戦略計画をどう進めますか。
「そこそこ売れるものが出ているが、反省点もある。第2次計画の製品化の目標は、100件と数的には少ないと思われるかもしれないが、量だけでなく、もう少し質を高めたい。さらに、高度な機能性食品を開発し、世界で売れるものをつくりたい」
―今後の活動は。
「4月にスタートした機能性表示食品制度に対応できる支援体制を充実させる。大学の研究者が国の助成金を獲得する時に県も支援していく。さらに商品開発にあたり、県の工業試験所の設備をもっと利用してもらえるようPRしたい」
(文・聞き手=静岡支局長・伊奈淳一)
日刊工業新聞2015年08月04日 モノづくり基盤・成長企業面