人工知能が人間を超えるのは相当先になる!?
画像は進化するも、当面の課題はコンピューターが言葉の意味を理解できるかどうか
「メタAI」が実現すれば人は勝てない
一方「ディープラーニングが全てを解決すると考える人は多いが、それは違う」と指摘するのは、慶応義塾大学で人工知能を研究する山口高平教授だ。
確かにディープラーニングでできることは飛躍的に増えた。ただし「画像理解は優れているが、言語理解はまだまだ」。当面の課題は「コンピューターが言葉の意味を理解できるかどうか」という点だ。
例えば「バスが渋滞にはまって遅刻してしまった。時間に間に合うにはどうしたらよかったかな」と現状のAIに問いかけると、「タクシーで来ればよかった」と回答した、という事例がある。AIが「渋滞=道路が混雑している」という言葉の意味を理解していないからだ。
ディープラーニングのように、単に大量のデータを集めて連続的に処理しただけでは、一見、関連のなさそうに見える概念同士を結びつけて意味をもたせることは難しい。「つながっていない概念同士を結びつけるための仕組みが必要」(山口教授)だという。
ディープラーニングの登場で、もう一つのキーワード「シンギュラリティー(技術的特異点)」にも注目が集まる。このままコンピューターの発達が続くと、2045年には人間の知能をコンピューターが超える、とする説だ。
山口教授は「自らプログラミングできる『メタAI』が実現すれば、人は勝てない。ただそこまでには相当な時間がかかる」との見方を示す。四則演算程度の数十行のプログラミングはすでに実現されているが「例えば現在のパソコンのOS(基本ソフト)レベルだと数百万行が必要。30年程度でできるかどうか」と疑問を呈す。
「人間を超えるAI」への課題はまだまだ多そうだが、それに対する研究も出始めている。新たな技術の潮流が社会の変化を加速させそうだ。
日刊工業新聞2015年08月03日 モノづくり面