三菱重工のユニキャリア買収へ導いた“2人の影の主役”

前ユニキャリア社長と現ルネサスCFOの連携が「最高のディール」生む

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ルネサスCFOの柴田氏(左)とユニキャリアの大森前社長
 三菱重工業、ニチユ三菱フォークリフトがユニキャリアホールディングス(HD)の買収を決めた背景にはニッチプレーヤーに転落するかもしれないという危機感がある。豊田自動織機、独キオングループという2強体制ができあがってしまえば追いつくのは困難を極める。ユニキャリアの企業価値を高め、世界再編の重要なピースに仕上げた立役者は前社長兼最高経営責任者(CEO)の大森聡氏。産業革新機構と一枚岩になった経営改革が、1100億円超という大型M&A(合併・買収)を演出した。

 【2社融合し成長】
 ユニキャリアの前身である旧TCMは国内で初めてフォークリフトを製造した老舗。旧日産フォークリフトは自動車技術を生かした開発力が強み。プライドの高い2社を融合し、ユニキャリアを成長軌道に乗せた大森氏の功績を評価する声は大きい。「厳しい態度で臨むことで社内共通の敵となり、旧2社の団結を引き出した」(志岐彰ユニキャリアHD社長兼CEO)。

 元ユニデン社長で外部から就任した大森氏は社長時代、「全く異なる業界から来たので、やるべきことを明確に言える」と急ピッチで経営改革を断行。2013年4月には当初計画より1年前倒しで2社を統合し、製品ブランド統一や海外市場開拓を進めた。

 ブランド統一により重複する製品ラインアップを解消し、14年10月にはユニキャリアブランド初の新製品を発売。ブランド統一時期は15年度を目標に設定し、一部を除いて完了した。海外でのM&Aも進めた。14年には中国の新興メーカーを買収し、新興国市場開拓のカギとなる低価格機種を手にした。志岐社長兼CEOは「課題だった品質も改善し、今後本格的に拡販できる」と期待する。

 【最高の出口戦略】
 そんな大森氏を陰に陽に支えてきたのが産業革新機構。日産自動車と日立建機から話を持ち込まれ、ユニキャリア設立から深く関与してきたのが、現在ルネサスエレクトロニクスCFOとして辣腕(らつわん)を振るう柴田英利氏(当時は革新機構マネージングディレクター)だ。

 当時の革新機構幹部は目の付け所に驚き、当初は産業車両という地味な業界にもそれほど注目していなかったが、出口戦略について「最高のディールになった」(関係筋)。柴田氏はJR東海出身という異色の経歴を持つ。大森氏の経営改革を支え、社内融和を媒介役となって調整してきた。リストラと成長戦略を並行し、ユニキャリアの基礎を固めた功績は光る。

 幸か不幸か、11年のユニキャリア設立前後は革新機構自体が今ほど忙しくなかった。当時の能見公一社長以下幹部もユニキャリアの経営支援にリソースを割ける体制だったのも奏功した。抱える投資案件が膨大に増えた今ではユニキャリアの躍進は難しかったかもしれない。

 【資源配分難しく】
 一方、三菱重工、ニチユ三菱にとって「世界競争から取り残されるという危機感が後押ししたディフェンシブな買収」(関係筋)という側面が強い。それよりも、ニチユ三菱はむしろ、ウエアハウス(倉庫)系製品の拡大を狙いに米市場で協業する独ユングハインリッヒと接近する方を得策とみていた節もある。ただ、入札が始まると、昨年計画した滋賀県近江八幡市の実験棟建設を中断。これはユニキャリアへの委託も選択肢に入ったからとみられる。

 ニチユ三菱は、ニチユと三菱重工のフォークリフト事業統合会社。17年度に営業利益率を8%(14年度3・5%)に引き上げる方針を掲げ、統合シナジーの確実な刈り取りを進めている。ユニキャリアと提携することで、経営資源の割り振りなどパズルは一層複雑になる。思うような効果を上げられるか不透明感も残る。

日刊工業新聞2015年08月03日 1面&機械・ロボット・航空機面

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