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旭化成ファーマ、血液凝固阻止剤の臨床試験

米・中で検討
 旭化成ファーマ(東京都千代田区、青木喜和社長)は、血液凝固阻止剤「リコモジュリン」について、化学療法誘発性末梢(まっしょう)神経障害(CIPN)を対象とする臨床試験を米国や中国で始める検討に入った。日本ではCIPNの効能追加に向けた第2相臨床試験を実施中で、このほど創薬コンセプトを実証できたため、海外展開も模索していく。自社の国内売上比率が高い状況を踏まえ、海外事業の強化を図る。

 CIPNは、がん治療の化学療法で見られる副作用の一つで、手足などに感覚を伝える末梢神経が損傷する。旭化成ファーマはリコモジュリンのCIPNに係る海外での臨床試験の開始時期を今後詰めるが、米国では1―2年後とみられる。中国での着手は米国の後になる公算が大きい。日本ではCIPNの効能追加に向けた第2相臨床試験を2016年に始め、POC(プルーフ・オブ・コンセプト、創薬コンセプトの実証)を取得した。

 リコモジュリンは08年に日本で汎発性血管内血液凝固症(DIC)の治療薬として承認された。だが海外では現在、いかなる適応症でも販売されていない。米国では凝固異常を伴う重症敗血症を対象とした第3相臨床試験が行われてきたが、主要評価項目について対照群との間で統計的な有意差が認められなかった。旭化成ファーマは今後の開発方針を規制当局と協議中。

 同社は18年度業績見通しにおいて、国内医薬事業の売上比率が約9割を占める。日本では後発薬の普及に伴って特許の切れた先発薬である長期収載品の市場が縮小しており、同社は新薬候補品の充実や海外事業の拡大が急務となっている。

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青木社長に聞く「国内事業、反転の兆し」


 青木社長に足元の経営状況や今後の事業戦略などを聞いた。

 ―18年4月の社長就任後、7カ月余りが経過しました。
 「現場と経営の距離を縮めたいと言い続けており、自分も医療機関回りを精力的に行ってきた。現場を見誤らないようにしたい」

 ―18年度売上高予想は前年度比0・3%増の660億円です。
 「過去4年間程度は長期収載品の落ちに対して新薬の伸びが足りず、全体としては減収で来ていた。だが、この上期を見ると、そこがやっとバランスできる形になり、反転が見えてきた。骨粗しょう症治療剤『テリボン』や、2月に発売した導入品の関節リウマチ治療薬『ケブザラ』が順調に伸びている」

 ―米国におけるリコモジュリンの第3相試験結果の受け止めは。
 「残念と言わざるを得ない。ただ成績を良く見ると、敗血症患者さんの予後改善に効果があることを感じさせるデータだ。非常に大きな未充足の医療ニーズがあるので、何とか開発を続けられないか検討している。もともと800例の試験を2本行う予定だったので、2本目の試験をどう進めるか、当局と協議していきたい。2本目開始のめどは19年度と思うが、1本目が予想外だったので、23年度に申請という計画は遅れが避けられない」

 ―この点以外の海外戦略はどうしますか。
 「リコモジュリン以外にも、海外で開発できる品目はそろってきている。パイプライン(開発品一覧)にはまだ出てきていないが、第1相臨床試験や前臨床試験の段階に上がっているものはある。それらを活用し、グローバルに事業を展開したい考えは変わらない」
                 

(聞き手=斎藤弘和)
日刊工業新聞2018年11月22日

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