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メガソーラーの落とし穴!思わぬ異常・不具合が発生

太陽光発電市場の第二幕は運用・保守の受注競争へ
メガソーラーの落とし穴!思わぬ異常・不具合が発生

メガソーラーで起きた不具合(イメージ)

 地面に亀裂のような穴があき、何枚もの太陽光パネルが押し合いながら重なっている。土が崩れてパネルを固定する架台が倒れ、一直線に並んでいたパネルの列が曲がった。2012年7月の買い取り制度開始後に稼働した大規模太陽光発電所(メガソーラー)の惨状だ。適切な整地をしないまま建てられたため雨で土が流れ、メガソーラーが倒壊した。これは極端な例としても、何らかのトラブルを抱えた太陽光発電所が増えている。

 太陽光発電所のメンテナンスを手がけるCO2O(東京都港区)に持ち込まれる相談も増加している。同社は14年7月にメンテ事業を始めたばかりだが、すでに発電所36件と契約済み。日常の運転に不安を感じ、同社に評価や診断を依頼する発電所も30件に達した。

 「計画値ほど発電しない」「発電にばらつきがある」など相談はさまざま。現場に急行すると原因も案件ごとで違うという。同社の酒井正行社長は「太陽光パネルの不具合は少ない。増えているのが設計・施工によるものだ」と分析する。工事中についた泥が原因と考えられるケーブルの不具合、同じく工事中、作業者が踏んだことで小さなヒビが入ったパネルも確認した。ヒビで太陽電池セルの配線が断線すると発電中、発熱で火災を起こすことがある。
 
 <不慣れな業者>

 森本晃弘SI事業本部長は「やっかいなのが土木だ」と指摘する。地盤が沈み、太陽光パネルにたわみが起きている発電所があった。地盤沈下が進むとパネルにヒビが入る。土木が原因だと工事のやり直しに時間がかかる。「急激に市場が立ち上がったため不慣れな業者が建設した案件が多い」(酒井社長)と解説する。

 いつ表面化するかわからない不具合もある。パネルが問題の発電量の低下は太陽電池メーカーが保証しており、設置後20―25年なら無償で交換してくれる。一方、設計・施工が原因だとEPC(設計・調達・建設)業者が対応するが、瑕疵(かし)担保期間は1―2年が多いという。メガソーラーなら数億―数十億円かけて建設する。不具合の解決のための予定外の出費を防ぐために「点検でリスクを早く見える化すべきだ」(同)と発電事業者に呼びかける。
 
 <遠隔監視で故障を診断>

 経済産業省によると3月末までに稼働した出力1000キロワット以上のメガソーラーは約2500件。中小規模の発電所も含めると27万件が設置された。建設需要は落ち着き、O&Mの市場が生まれている。特に参入企業が多いのが、発電所をインターネット経由で監視し、発電データに異変があれば発電事業者に知らせるサービスだ。太陽光パネル国内大手の京セラは遠隔監視に進出し、すでに131件の発電所にサービスを提供している。

 日立製作所は7月、太陽光パネルの故障を遠隔地から診断するサービスの見積もりを始めた。電圧と電流を計測し、あらかじめ計算した「故障モデル」と一致したらパネルに故障があると判定する。他社の故障診断は、太陽光パネル数十枚が並んだストリング(列)単位で監視し、発電量が少ないストリングに故障したパネルがあると指摘する。日立はストリング同士の比較ではないので、発電量が多いストリングであってもパネルの故障を見つけ出せる。しかも封止材の劣化など故障原因も特定できる。
 
 従来の方法だとストリングに3―5枚の故障パネルがないと異常と判定できないが、日立の手法だと1枚の故障でも発見可能。自然エネルギー発電運営部の上田純部長は「故障パネルが増えるまで放置しないので、パネルの不具合による売電収入の減少を最小限に食い止められる」と話す。今後も新しいサービスが開発され、O&Mの受注競争が激しくなりそうだ。
 
日刊工業新聞2015年7月29日深層断面から抜粋
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
「メンテナンスフリーという触れ込みだったけど実際は違う」。こんな声がちらほらと聞こえます。記事に紹介した以外にも設計時に見逃された陰があった、ケーブルの長さの違いによる発電量のばらつき(直流なので長さが違うと抵抗が違う)、洗浄中のパネルの破損など、未経験のトラブルが起きています。空前の建設ラッシュで大・中・小合わせ27万件の太陽光発電所が稼働しました。27万件(現状)のO&Mの市場が生まれた計算になります。M2M、IoT、ビッグデータなど新しい故障発見技術が出てくるでしょう。実際に現場で作業するメンテナンスにも専門性の高い知見・技術が求められそうです。

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