エンジ各社の構造改革待ったなし。守りと攻めで生存競争

千代田化工、1050億円の赤字見通しで継続企業の注記も

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山東理二千代田化工社長(9日)
 千代田化工建設は9日、2019年3月期連結当期損益が1050億円の赤字(前年同期は64億円の黒字)に転落する見通しを受けて、経営再建の骨子を公表した。採算が大幅に悪化した米国の液化天然ガス(LNG)プラントの完工を最優先する体制を整える。一方、毀損した財務基盤の強化に向けて、筆頭株主の三菱商事と協議しているが、同日都内で記者会見した山東理二千代田化工社長は明確な方針を示さなかった。同日発表した決算短信に、「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン)」を記載した。

 米国ではプラント建設の技能者が限られているのに加え、米トランプ政権の移民対策により労働力不足が深刻化している。そのため「生産性を上げられるサブコンストラクター(建設会社)を起用する」(山東理二社長)ことで、同プラントを完成させる方針。山東社長直轄の新組織が建設計画を管理する。

 千代田化工は4―9月期連結当期損益が1086億円の赤字(前年同期は34億円の黒字)で、9月末の純資産は3月末比1100億円減の494億円に減少した。自己資本比率も3月末の37・5%から9月末では12・7%に低下している。山東社長は財務基盤を強化するために「あらゆる選択肢を三菱商事と協議している」と述べるにとどめた。19年3月までに三菱商事を軸に、金融関連企業などからも支援を受ける方向で調整する。

 ただ米国の同プラント建設をめぐっては、これまでも人員不足や生産性の低下を理由に工事費用を追加計上している。投資家からの信頼を回復するには、財務基盤を安定化させる資金調達を急ぐ必要がある。

 千代田化工は00年代にも業績が大幅に悪化し、債務免除とともに、第三者割当増資を実施。08年に三菱商事と資本業務提携している。

日揮は持ち株会社制検討 


 エンジニアリング専業各社が相次いで事業構造改革に乗り出す。日揮は8日、2019年10月1日付で純粋持ち株会社制に移行する検討を始めたと発表した。プラントなどへの投資再開をにらんで体制を見直すとともに、海外の大型案件を進める上でリスクを軽減する狙いもある。米国の液化天然ガス(LNG)プラントの建設で採算が大幅に悪化した千代田化工建設も、経営再建策を9日に公表する見通し。テコ入れの成否が各社の収益力を左右する。

 日揮は海外や国内市場の特性に応じて、プラントのEPC(設計・調達・建設)を遂行できるように、海外のEPC事業を分社化して持ち株会社の傘下に置く。新事業会社にはLNGプラントなど手がけるエネルギー部門と、インフラ部門を設ける。一方、国内市場への対応として、日揮の国内事業と子会社の日揮プラントイノベーション(横浜市西区)を統合し、経営資源を集約する。

 日揮は「主力の『オイル&ガス』分野が回復している」(佐藤雅之会長)ことを踏まえ、受注拡大に向けた構造改革の時期と判断した。一方、17年3月期に米国の石油化学案件などで当期赤字に転落した苦い経験も持っており、損失リスクを減らすために機動的な体制を整えることも目指す。

 千代田化工は米国案件で追加の工事費用が発生し、19年3月期の当期損益が1050億円の赤字(前期は64億円の黒字)に転落する見込み。財務状況の悪化に伴って抜本的な再建策が求められている。米国案件の影響で業績が悪化した東洋エンジニアリングは、構造改革の一環で新日鉄住金エンジニアリング(東京都品川区)との連携を強化する。

 また日揮は同日、19年3月期連結業績予想で、売上高を前回公表比600億円減の6400億円、営業利益も同10億円減の220億円に下方修正した。東洋エンジは予想を据え置いた。

三井E&S、火力の新規受注見合わせる


 三井E&Sホールディングス(HD)はエンジニアリング事業を抜本改革する。多額の損失を計上した火力発電所土木建築工事の新規受注を見合わせるほか、北米の化学プラントの建設工事からも手を引く。

 8日会見した塩見裕一取締役最高財務責任者(CFO)は、「2018年度内に組織の見直しを含めた再建策を検討する」と述べた。同社は4月に持ち株会社に移行したばかり。初年度から構造改革に追われることになる。

 三井E&Sは同日、19年3月期連結業績予想を発表。インドネシアの石炭火力土木工事で約413億円の損失を計上し、2期連続の当期赤字を予想する。財政状況が著しく悪化し、金融機関とのコミットメントライン契約上の財務制限条項に抵触。継続企業の前提に関する重要事象を注記した。

 自己資本は大きく毀損し、18年4―9月期の自己資本比率は18・7%(18年3月期は23・2%)に下落。持ち合い解消を含めた有価証券の売却など、聖域を設けずに損益改善を進める方針。

 火力発電所土木工事については過去複数の完工実績があり、赤字を出したことはないという。手堅い事業に位置付けていたが今回、海上取放水管工事で脆弱(ぜいじゃく)地盤を読み切れず、海中に据え付け済みのガラス繊維強化プラスチック製の配管が破断。鋼製への全量交換という大幅な後戻り作業が発生することになった。

 三井E&Sのエンジニアリング事業は海外大型工事の失敗が続き、3期連続の営業赤字となる見通し。海外の化学プラント事業、火力発電所土木事業を縮小する一方、今後はバイオマス発電など環境エネルギー分野に軸足を移す。

日刊工業新聞2018年11月9日/10日

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