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LNG投資再開でエンジニアリング市場はようやく成長へ!?

大手3社のトップに聞く
LNG投資再開でエンジニアリング市場はようやく成長へ!?

日揮がインドネシアに建設したLNGプラント

 伸び悩みが続いたエンジニアリング市場が2018年にターニングポイントを迎えそうだ。液化天然ガス(LNG)プラントへの大型投資が再開することが見込まれており、再生可能エネルギーの案件の積み上げも期待できる。エンジ各社の受注環境が改善し、中長期の収益拡大の足がかりをつかむ。

 プラント投資の前提となるLNGの消費拡大で目立ち始めたのが中国だ。石炭をエネルギー源として頼ってきたが、大気汚染の深刻化を受けて、環境負荷が少ないLNGの調達を増やすとみられている。

 国際エネルギー機関(IEA)は中国が日本を抜いて最大のLNG輸入国になるとの見方を示す。ここにきてLNGのスポット(随時契約)価格も値上がりしている。

 一方、最大のLNG輸出国のカタールではLNGの生産能力が現在の年間7700万トンから、中長期的に同1億トンまで増える見通し。エネルギー企業がLNGの高まる需要を見据えて投資することでエンジ市場が活性化する。

日揮社長・石塚忠氏


 ―LNGプラントの見通しは。
 「カナダのブリティッシュコロンビア州で計画されている案件に応札中だ。米国のオレゴン州の案件は手中に収めた。またインドネシアのLNG受け入れ基地は17―18年度にかけての受注を見込んでいる」

 ―浮体式LNG設備(FLNG)をはじめ海上の案件を重視する方針を打ち出しました。
 「FLNGに関連する周辺技術を持っており、手がけられるのは我々とフランスのテクニップだけで優位性が高い。今後、西アフリカでFLNGの案件が期待できる。ガーナ沖でFPSO(浮体式石油・ガス生産貯蔵積出設備)を手がける企業にも出資した。収益源であるO&M(運用・保守)サービスを勉強する。船の案件なので一度参入すると、他社はなかなか入り込めない」

 ―石油化学の案件も見込めます。
 「油価の値下がりで原料が安いことから、中東で4―5件の大型案件が出てくる。シンガポールでは石油精製のFEED(基本設計)の受注を目指している」

 ―インフラ分野の取り込みは。
 「オイル&ガス部門のエースだった人物を投入し、案件を提案してきてくれている。東南アジアで銅をはじめとする非鉄の製錬や太陽光発電の案件の受注を目指す。国内では洋上風力発電に興味を持っている。抗がん剤やバイオ医薬などに関連する案件も増えていて忙しい」

千代田化工建設社長・山東理二氏


 ―LNGプラントの案件が動きだしそうです。
 「モザンビークで発注の内示を受けている案件はFID(最終投資判断)を待っており、今年後半を見込んでいる。現地が大規模なガス田で、我々は(多くのプラントを手がけた)“第二のカタール”に位置付けている。米国テキサス州の案件も、18年度のFIDを期待している。ただLNGの開発を前提にした計画は立てない」

 ―中期経営計画に沿った事業体制に再編します。
 「LNG・ガスをはじめ五つの本部を設けているが、4月からエネルギー、発電や医薬を担当する部門、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の活用を進める部門の三つに変更する。新たな組織により中計で示した姿勢を明確化する」

 ―水素を活用する社会を見据えて水素供給網の実用化を目指しています。
 「ブルネイから液化した水素を輸送し、川崎市内で気体の水素に戻して、ガスタービンの発電に利用する実証を20年に始める。商業化に向けては水素を大量に調達することが必要だ」

 ―海洋エンジニアリング事業の損失処理にめどを付けました。
 「(海洋エンジ事業を展開する)英サブシー7と協業に向けて検討している。サブシー(海中・海底)関連の案件を再び(専業会社を持って)手がけることはない。サブシー7と必要な情報を共有しながら、役割を分担していく」

東洋エンジニアリング社長・中尾清氏


 ―停滞していたエネルギー企業の投資動向は。
 「受注環境が去年より改善するだろう。東南アジアや中央アジアなどで石油化学や肥料プラントなどの案件を見込んでいる。粗利益を重視しながら受注を狙う」

 ―インフラ分野の状況は。
 「我々に追い風が吹いていて、メガソーラー(大規模太陽光発電所)やバイオマス発電の案件は引き続き出てくる。発電を近未来の(事業の)柱として期待している」

 ―米ゼネラル・エレクトリック(GE)とIoT分野での連携を進めています。
 「(GEのIoT基盤である)『プレディックス』を活用する。先駆性は重要だが、IoTの技術を使って何ができるのかを考える必要がある。IoTにかかわる我々の強みはやはり技術力だ」

 ―AIを利用したサービスのニーズも予想されます。
 「日本の石油化学会社はプラントの運転能力が高く、保守にも取り組んでいる。そのため国内よりも、途上国でのプラントの運転支援の方が(AIやIoTなどの)ビジネスの伸びしろが見込めるだろう。むしろエンジニアリングに必要な知識の伝承としてAIを使うことが重要だ」

 ―新規事業の育成が必要です。
 「IoTや植物工場の取り組みを進めており、新しい芽が出てきている。ビジネスとして実りを得られるテーマを定めながら、18年は成長軌道に戻す」
日刊工業新聞2018年1月4日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
発電や再生可能エネルギーなど、インフラ分野の案件もコンスタントに見込める。エンジ各社にとって収益源を多角化するには取り込むことが必要。海外市場の攻略がカギとなる。 (日刊工業新聞第一産業部・孝志勇輔)

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