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日立にメタウォーター…。これからの「上下水道」はIoT・AIが制す

 日立製作所はIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)を活用して上下水道事業を効率化する「O&M支援デジタルソリューション」を開発した。老朽化による設備更新費の増加、人口減による料金収入の落ち込み、熟練者の引退といった経営課題を抱える上下水道事業者に提供する。メタウォーターもクラウドによる業務支援を提案しており、水インフラでICT(情報通信技術)の活用が広がろうとしている。

 日立のソリューションは上下水道施設の設備や運転、作業記録などさまざまなデータをIoTでクラウドへ集め、AIで分析する。日立のIoT共通基盤「ルマーダ」も活用する。事業者別の課題に対応して提供する機能を柔軟に変えたり、追加できたりする。

第1弾として設備台帳の電子化サービスの提供を始めた。メーカー名、型式、点検日や故障の記録をデジタル化して一覧できるようにする。エクセルで保存していてもファイルが別々ということもあり、これまでは確認に時間がかかっていた。日立のサービスでは情報を探す手間を省ける。

 拡張現実(AR)を使った点検も提供中だ。作業者が配管にタブレット端末を向けると画面の配管上に点検箇所を示すアイコンが重なって表示される。バルブに近づくと画面には回す方向のアイコンが出る。不慣れな作業者でも画面のナビに従うと迷うことなく点検ができる。

 同社水ビジネスユニットのデジタルソリューション推進室の安富弘泰室長は「作業手順を電子化し、教育期間を短くできる」と技能伝承でのメリットも強調する。
 今後はAIによるサービスを追加予定で、故障の予兆診断を実証中だ。トラブル発生前に修理をすれば、故障による運転停止を避けられる。気象情報を使った河川の水質変化の予測も実証中だ。事前に変化を察知し、薬品の投入しすぎなど過剰な運用を減らす。

 全国の上下水道事業者の経営は厳しく、AIやIoTなど最新技術を活用した業務効率化の余地がある。

 メタウォーターもクラウドに情報を集め、事業者の業務を支援するサービスを提供している。水ing(東京都港区)は水道メーターの検針データを無線通信で収集する実証を神戸市で実施した。普及すれば、現場に出向いて検針する業務を減らせ、効率化できる。
              

(文・松木喬)


日刊工業新聞2018年11月7日
八子知礼
八子知礼 Yako Tomonori INDUSTRIAL-X 代表
文中でも触れられているように、この領域ではメタウォーターがWBC(Water Business Cloud)と名付けた、設備管理と運営保守の効率化を目指すソリューションが5〜6年前から富士通と共に構築運用されて顧客である上下水道事業者に提供されている。今回の日立のソリューションも、これまで培ったそれぞれの部分的なソリューションをトータルパッケージにまとめたものだと言える。今後上がってくる大量のデータをうまく活用して上下水道全体を最適化するためには、AI活用とそれを少人数でも回せるような運用体制まで見据えた導入が必要となるだろう。

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