がん細胞に入るナノ粒子、核酸医薬応用に期待かかる

静岡県立大が開発

 静岡県立大学薬学部の浅井知浩教授らは、がん組織に取り込まれやすいナノサイズ(ナノは10億分の1)の脂質粒子を開発した。がん組織などの酸性環境下で正電荷を帯びることで、細胞質に効率的に入り込む。遺伝子発現を制御する核酸を粒子内に入れ、薬物送達システム(DDS)を活用した「核酸医薬」の開発へ応用が期待される。

 がんの治療に、リボ核酸(RNA)を活用する手法の開発が進む。RNAをがん細胞の特定の遺伝子に作用させることで、細胞内のたんぱく質の発現を制御し、細胞増殖を抑えるなどの治療ができる。製品化には、肝臓には集積せず、がん細胞に選択的に届ける方法の開発が必須であった。

 浅井教授が開発した「チャージ・リバーシブル脂質ナノ粒子」は、物質を特性付ける構造「官能基」によって粒子表面の電荷が劇的に変化するため、水素イオン指数(pH)の変化にも安定した性質を持つ。

 pHが酸性に偏っているがん組織環境では、チャージ・リバーシブル脂質ナノ粒子の表面は正電荷を帯びる。これにより粒子は細胞質へと効率よく移行し、がん細胞まで核酸を効率的に送達することができた。

 さらに、体内でチャージ・リバーシブル脂質ナノ粒子を長時間滞留させるために、ポリエチレングリコールを付加したものを作製。がん細胞を移植したマウスに投与すると、腫瘍への集積性が向上し、一方で肝臓への蓄積は軽減していた。

 浅井教授は「実用化のため、産学連携を推進して創薬に繋げたい」と話した。

日刊工業新聞2018年10月26日

  

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