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「地域別最低賃金」、企業が注意すべきこと

適性利益確保の工夫を
 2018年度の地域別最低賃金額が決定し、全国加重平均額は昨年度から26円引き上げの874円(時間給)となった。10月初旬より適用されることになっているが、今回はこの「最低賃金制度」について確認したい。

 最低賃金とは、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額を定めたものである。根拠は1959年に制定された「最低賃金法」、各都道府県に一つずつ定められる地域別最低賃金と、特定の産業について設定される特定最低賃金の2種類があり、両方の最低賃金が同時に適用される場合、高い方が適用される。

 この最低賃金、原則としてパート・アルバイトを含めすべての労働者に適用される。たとえ労使の合意があっても、最低賃金を下回る額を定めた労働契約はその部分が無効となり、違反をすれば罰則もある。最低賃金を下回っていないかどうかは、給与が時間給で支払われている場合は判別しやすいが、月給の場合は、毎月支払われる基本的な賃金を時間換算して確認する。ここには残業手当、家族手当、通勤手当、精皆勤手当や賞与は参入しない。基本給を残業代込みとしている場合は特に気をつけたい。

 さて、最低賃金は今後も上がる予定である。17年3月に策定された「働き方改革実行計画」では、最低賃金を年率3%程度引き上げ、全国加重平均1000円を目指すと明記されている。これにより非正規社員に対する処遇改善は見込まれるだろうが、企業にとっては人件費負担が増え、収益悪化を招きかねない。本来、賃金を上げるのはその働きぶりや能力を評価したときであり、法で縛るものではない、という声も聞こえてきそうであるが、もともとの賃金が「憲法で保障されている人間的な最低限度の生活」を送れる水準に達していないという見方も根強い。

 企業が最低賃金上昇に対応しながら、適正利益を確保するにはどうしたら良いか。人員配置の見直しや教育訓練、業務改善等により生産性を上げられないか検証し、高付加価値化による価格転嫁を試みたい。設備投資など生産性向上に向けた取り組みを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その費用の一部を助成する「業務改善助成金」などの支援施策も上手に活用してほしい。
(文=高橋美紀<中小企業診断士>)
日刊工業新聞2018年10月2日

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