来年7月改正迫る「RoHS」、電機各社の対策は順調?

分析ビジネスに商機も

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フタル酸エステル4種の分析受託業務を始めたOKIエンジニアリング
 欧州連合(EU)の化学物質規制「RoHS」の改正が迫ってきた。2019年7月22日から使用が制限されるフタル酸エステル4種は多くの電子機器に使われている。鉛の既存規制よりも対策の難易度が高い。大手電機メーカーは早めに対応を進めたため混乱は少ないものの、一部で誤解もあり、現場の負担が増す懸念もある。

大きな混乱なく―準備に時間、周知徹底


 「早く手を打ってきたので、ここまで減らすことができた」。パナソニック品質・環境本部で製品の化学物質規制を担当する小畑康弘ユニットリーダーは安堵(あんど)する。フタル酸エステル4種から他の素材への代替が済んでいない製品が「残り数%」になった。

 19年7月のRoHS改正後、EU域内で販売する電子機器には、フタル酸エステル4種の含有が1000ppm(重量比0・1%)までしか認められない。事実上の使用禁止だ。

 フタル酸エステルは樹脂を柔らかくする可塑剤として普通に使われている。電源コードのほか、製品内部の電気コードやケーブルが主な用途だ。

 エアコンやテレビなどほとんどの同社製品にコード・ケーブル類が搭載されている。接着剤や塗料にもフタル酸エステルが含まれるため、対象製品は膨大だ。

 同社は1年後の規制を控えた7月22日、フタル酸エステル4種を使う製品の納入を停止した。調達先にはすでに16年に期日を伝えており、代替物質への切り替えを進めてもらってきた。残りの未対応製品も、「一次調達先を通してお願いしている」(小畑リーダー)状況にある。

 コード・ケーブル類は海外調達が多い。しかも直接取引する一次調達先ではなく4次、5次などサプライチェーンの上流側で作られている。サプライチェーンをたどってメーカーに依頼しても労力がかかりすぎる。そのため準備に時間をかけて周知を徹底してきた。

 同社は一部事業所では受け入れ検査も実施する。申告上は「含有なし」であっても、含有製品が納入されることもあるためだ。混入リスクの高い製品を把握しているといい、製品を絞って分析する。

 現行RoHSで規制されている鉛などは蛍光X線装置で確認できる。しかし、フタル酸エステルは他の樹脂に混ざると分析が難しく、高度な検査装置が必要となる。「RoHSが始まった06年当時よりも、対応は難しくなっている」(小畑リーダー)と苦労をにじませる。

 東芝、ソニー、NECもフタル酸エステル4種の含有製品の納入を禁止した。19年1月に納入を停止する富士通、日立製作所も早くから周知してきたため、今のところ大きな混乱は起きていない。

 

新たなビジネス―分析装置・受託検査に商機


 RoHSの改正が近づく中、日立ハイテクサイエンス(東京都港区)の分析装置に引き合いが増えている。同社はフタル酸エステル4種の製品への含有を10分で判定できる分析装置を17年7月に発売した。

 フタル酸エステルの含有は、製品から削りとった試料を熱して気化し、イオン化された成分を調べることで分析する。成分の質量がフタル酸エステル4種と一致すると含有と判定する。従来、結果が出るまで30分から数時間かかっていた。

 同社の装置は熱分解から分析までを途切れなくできる構造とし、10分以内での分析を可能にした。1日8時間の作業で50試料を検査できる計算だ。分析システム営業部営業二課の池上文哲課長は、「現場で使うことを想定して開発した」と狙いを説明する。

 当初は納入部品を調べたい完成品メーカーからの引き合いが目立ったが、「1月以降、サプライヤーから増えている」(池上課長)という。完成品メーカーが説明会を開くなどして対応を呼びかけてきた影響だ。

 また「品質ポリシーとして導入するサプライヤーもいる」(同)。分析装置があればしっかりと検査している証拠であり、完成品メーカーに安心して取引してもらえる。

 東芝は有機溶剤を使って抽出して分析する簡易手法を開発した。少量の有機溶剤で分析するため、作業を省略できるという。20万円で導入でき、検査費用を大幅に削減する。グループ内での検査に活用する。

 OKI子会社のOKIエンジニアリング(東京都練馬区)は7月、製品を預かって4種の含有を調べる分析受託業務を始めた。含有の有無だけでなく、含有量も詳細に分析して報告する。

 部品が小型・微細化しており、試料の採取も難しくなっている。同社調査分析グループの征矢健司グループ長は、「当社は製品のどこから試料を取ればいいのか分かっている」と技術的な強みを強調する。調査依頼が増えており「電機業界が改正RoHSに対応しようと大きく動きだしている」と指摘する。

日立ハイテクサイエンスの分析装置。フタル酸エステル4種の含有を10分で判定

混乱の懸念―正しい知識必要


 RoHSへの対応が慌ただしくなる中、混乱の懸念も出てきた。その一つが分析のあり方だ。「IEC(国際電気標準会議)の規格外の試験方法は使用できない」との誤解が一部にある。IECのRoHS分析の規格「IEC62321」で、フタル酸エステル4種の分析法が示されている。

 IECの委員会で規格づくりに携わる竹中みゆき氏(日立ハイテクノロジーズ)は、「性能が担保できれば他の試験方法でもいい。負担の少ない方法を選んでほしい」と訴える。

 ただ、大手メーカーでも対応に違いがあり、中小企業は取引先の調達基準の確認が必要だ。例えばRoHSの規制対象ではないが、4種が使われた包装材を納入禁止にする大手メーカーも多い。

 緩衝材やテープなどが高温で長時間、製品に触れているうちにフタル酸エステルが電子機器に移る可能性があるからだ。また工場の滑り止めマットにもフタル酸エステルが使われており、マットからの移行を警戒する大手メーカーも少なくない。

 ただし、大手メーカーからの過剰な要請もある。対象外の金属製品に規制物質の含有がないかを証明するように求めるケースだ。RoHS対応の負担を軽くするためにも、各社の担当者は正しい知識を身に付ける必要がある。

日刊工業新聞 2018年10月2日

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

20年までに化学物質によるリスクを最小化する世界目標があります。達成に向けて欧州はRoHS、REACHを始めました。目標は理念であり「実現不可能」なんて思っても、動くのが欧州。2年後の20年にリスクが最小化されるかどうかは問題ではありません。これって海洋プラスチックゴミ問題、パリ協定にも通じます。

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