「サイレントチェンジ」にご用心!改正RoHSで起こるホラーのような話

サプライヤーによっていつの間にか材料が変えられてしまう

 欧州特定有害物質規制(RoHS)が改正され、2019年から新たに4物質の使用が制限される。電機メーカーの対応が慌ただしくなるにつれ「サイレントチェンジ」への警戒も強まっている。サプライヤーによっていつの間にか材料が変えられ、事故を引き起こすのがサイレントチェンジだ。海外生産が進んだ状況でのRoHS改正が、サイレントチェンジを誘発する危険がある。

 フタル酸エステル4物質、事実上の使用禁止 

 欧州連合(EU)はRoHSの改正スケジュールを確定した。19年7月からEU域内で流通する電子機器はフタル酸エステル4物質の使用が制限される。最大で重量比0・1%までの濃度しか含有が認められず、事実上の使用禁止だ。
 
 フタル酸エステルはケーブル素材を柔らかくする可塑剤としてパソコンやテレビのACアダプター、製品内部の電気ケーブルに使われている。だが、人体への有害性が懸念され、子供が口に入れるオモチャへの使用を禁止した国・地域がある。

 東芝の環境推進室の竹中みゆき参事は「ハンダの鉛フリー化くらいの衝撃がある」と改正を受け止めている。06年施行のRoHSは鉛など6物質の使用を制限した。電機メーカーは鉛フリーハンダに対応する生産技術の開発、サプライヤーへの協力要請で慌ただしく準備に追われた。

 「海外調達が増えており、前回よりも気をつけることが多い」と竹中参事は話す。中でも「環境規制の強化に伴い、サイレントチェンジも新たな課題となった」と警戒する。
 
 品質問題にとどまらず、完成品メーカーは法令違反に問われることも

 取引先が勝手に材料を変更するサイレントチェンジは製品が不具合を起こして初めて発覚する。完成品メーカーは劣化や変形の原因となった材料が使われていたことも、使用を指示した覚えもない。これまでに発熱事故が起きた事例も報告されている。海外生産や現地調達の拡大、海外メーカーへの生産委託がサイレントチェンジを生む土壌となっている。材料への知識が乏しく、コスト削減のために3次や4次サプライヤーが無断で材料を変える例が見られる。

 今のところサイレントチェンジは品質問題として捉えられているが、規制物質が勝手に混入されると完成品メーカーは法令違反に問われる。フタル酸エステルは見分けるために高度な分析が必要で、成形品に混入すると簡単には発見できない。化学物質規制対応に詳しい中小企業診断士の松浦徹也氏は「入ってないと言われれば信じるしかない」と話す。

 特に「サプライヤーを変えた時」に注意が必要と指摘。新規サプライヤーは求められる品質を満たそうとフタル酸エステルを混ぜるかもしれない。代替材料が高価だとコストダウンを目的にフタル酸エステルや他の材料を使う可能性もある。
 
 サプライヤーの対策は「系列化」と“あうんの呼吸”をやめる

 松浦氏は対策として「系列化」を上げる。かつての強固な系列では完成品メーカーが末端のサプライヤーまで把握していた。「信頼関係が抑止になる。3次、4次サプライヤーとも顔が見える関係を築くべきだ」と提案する。

 二つ目に「“あうんの呼吸”であった内容も仕様書にしっかりと書き、サプライヤーや生産委託先に伝える」ことを求める。規制物質なら使用禁止と明確に書くが、問題がなければ「汎用材料を使用するように」とあいまいな記述になりやすい。1次サプライヤーには理解してもらえるが3次、4次に意図が伝わるとは限らない。

 物質名を記入するとともに「変更があれば連絡すること」も記す。「国内と海外では価値観が違うことがある。問題が起きても『変更を知らせることまでは要求されていなかった』と言われかねない」と指摘。そして仕様書を末端のサプライヤーまで伝えるのも肝心だ。
 

日刊工業新聞2015年08月11日 深層断面

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村上 毅

村上 毅
08月15日
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 「サイレントチェンジ」の名前にあるように、メーカーにとってはサプライヤーの「静かな」反乱とも言えるのではないか。国際分業がこれだけ進むなかで、製品を取り巻くサプライチェーンの管理が難しくなっている。IT化はもちろん、末端にまで信頼を醸成するか。泥臭い取り組みも求めている。

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