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大成建設が他社と差別化する新技術、600億円の使い道

長島一郎執行役員技術センター長インタビュー
大成建設が他社と差別化する新技術、600億円の使い道

大成建設公式フェイスブックページより

 大成建設は2018―20年度の中期経営計画に海外事業の持続的成長や、中長期の売上高目標2兆円を織り込んだ。3年の成長投資3000億円のうち技術開発に600億円を投じるなど、研究開発部門も重要な役割を担う。長島一郎執行役員技術センター長に、R&D(研究開発)の重点施策を聞いた。

 ―技術センターの役割と基本方針は。
 「現場や設計で求められる技術を支援し、新技術開発で他社と差別化を図る。専門家集団として各分野の新技術情報を取り入れ社内に展開する。今は人手不足で仕事量も多く忙しい。将来を見据えた取り組みが大事だ」

 「新技術を取り込む上で人材育成を重視する。まず専門分野で実績を上げ、学位をとり世に認められる。次に専門外に視野を広げ新たな領域に挑戦する。留学、共同研究、異業種や他分野と積極的に交流する。いま若手をオーストリア、米国に留学させている」

 ―力を注ぐ分野は何ですか。
 「生産性向上は建築、土木の機械化と自動化だ。人手で大変な作業を機械に置き換える。『T―iロボ』シリーズはコンクリート床仕上げなど8機種ある。熟練者のノウハウや人工知能(AI)を活用して自動化し、若い人が入職したくなる魅力ある作業所にする」

 ―安全・安心や環境分野はどうですか。
 「安全・安心は津波、地震、火災、風など自然災害の対策だ。東日本大震災以降、津波の評価、解析技術を開発、14年に実験施設を造った。音響風洞実験室は他社にないユニークな取り組み。マンションの手すりなどに強風が当たると発生する不快な音を、設計段階で起きないよう対策できる」

 「環境は省エネ分野が重要。14年にゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)を完成し、研究が進む。居住者に我慢を強いることなく、快適性を維持して省エネを図る。AIやIoT(モノのインターネット)技術により人の行動を分析、生産性を上げる。旧生物工学研究所が取り組んだバイオ関連技術も、土壌や工場排水の浄化事業に展開されている」

 ―企業や大学との連携が欠かせません。
 「自前主義の技術開発は時間がかかる。ニーズ、課題が明らかならビジネスマッチングを行う。これが発展し、複数企業や大学と知恵を出し合う『エコシステム』が構築できる。新たな研究開発はオープンイノベーションが必要。建設業以外のメーカーや中小、ベンチャー企業と対話する場『共創セッション』をつくり、光る技術がないか探っている」
長島一郎執行役員技術センター長

(聞き手=神谷信隆)
日刊工業新聞2018年9月28日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
人手不足の中で生産性向上の技術開発を推進しつつ、ポスト五輪を見据え、人材育成に力を入れる。留学や共同開発、異業種交流やオープンイノベーションに積極参加できる仕組みを作り、活用を促す。中計で掲げる海外事業拡大をにらみ、進出先の大学、研究機関に加えて異業種企業やベンチャー企業とも連携強化が欠かせない。(日刊工業新聞社・神谷信隆)

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