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広島銀行が挑む被災地域の再生

広島銀行頭取・部谷俊雄氏インタビュー
広島銀行が挑む被災地域の再生

広島銀行頭取・部谷俊雄氏

**被災地域再生へ総合提案
 広島銀行の部谷俊雄頭取が6月27日に就任してすぐ、地盤とする広島を中心に西日本豪雨が起きた。得意先へのあいさつもそこそこに陣頭指揮を執った。部谷頭取は「復旧、復興に向け資金提供だけでなく、保険などを含めトータル提案が必要」と指摘する。超低金利による収益低迷という荒海の中、かじ取りも待ったなし。地域の銀行として中小企業をどう後押しするか。部谷頭取に事業継続計画(BCP)や中小支援の方針などを聞いた。

―取引先企業に甚大な被害が出ています。

「大変広い範囲で多くの企業が被災した。BCPの観点からも、認識の甘さを感じた。災害に備えるレベルを引き上げなくてはならない。復旧、復興に向けては単に資金を提供するだけではなく、保険などの“備え”を含めたトータルの提案をしていく必要がある。被災地域の他行と創設する復興ファンドもその一つだ。地域あっての銀行。マクロ、ミクロを問わず、もっと地域に関与していく方針だ」

―2022年3月期までの5カ年中期経営計画は、軌道修正が必要でしょうか。

「中計は基本的に変えないし、新たに加える考えはない。ただ計画を着実に執行するために、企業文化や風土などを変えていくことは肝要。顧客の立場で考えるマーケットインの発想だ。企業の資金不足が想定できない現状から4、5年先を見たとき、いま何をすべきか認識し行動しなくてはならない」

―具体的には。

「例えば、中小企業の資金以外のコンサルティングをどう強化するか。個人では資金運用から総資産管理までをどうするかなどだ」

―行員の専門技能の向上が欠かせません。

「その通りだ。取引先の決算書だけを見ていたのは過去のこと。主戦場は中小。中小に選んでいただける銀行になるためには企業を知ることが大切だ。知ることで課題が見つかり、それに対するソリューションが生まれる。幅広い知識を持つ人も必要だが特化した専門性の高い人材を育てなくてはならない。提案型銀行としての差別化が生命線になる」
日刊工業新聞2018年9月21日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
部谷頭取は「事業モデルが脱金利になりつつある今、自ら変わらなくては生き残れない」と、新たな挑戦を奨励する。その一つとして進む、地方銀行の経営統合などについて「規模は必要」との立場だ。再編が進む中、「膨大な精力を使ってもメリットがある合併話はない」と否定するが、主導権を握ることも挑戦の一つだろう。(広島・正伝盛豪)

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