理念先走り、設立2年の“電力会社”はなぜ倒産した?

福島電力、経営体制伴わず

 2016年10月に新電力会社として設立した福島電力は、18年8月8日に破産手続き開始決定を受けた。1月発売の会員制情報誌で取り上げられて以降、信用不安が表面化するなか、債権者から破産を申し立てられていた。

 福島電力の登記面本店は、東日本大震災で多大な被害を受けた福島県楢葉町。同社に契約を切り替えれば割安で電気の提供を受けられるうえ、収益の一部は震災復興に還元されるモデルを構築。地元の復興支援につながるイメージを前面に出して、営業を展開した。

 この結果、事業開始から短期間で順調に契約を獲得。会社側によれば、半年で1000社超と業務委託契約を締結。全国で積極的な営業をかけ、契約数は一時5万を超えたという。

 表向きは順調に事業を展開しているかに見えたが、内情は急速な拡大スピードに社内体制の整備が追いつかず、対応が後手に回ることもしばしばあった。

 契約者との間で営業手法や料金請求でトラブルが頻発。新規の顧客開拓も難しい状況になるなか、18年4月下旬頃からは他社への契約切り替えを促していた。

 5月18日には電力小売事業からの撤退を公表。この間に取締役が次々と退任するなか、一部取引先に対する支払い遅延も発生した。7月19日には債権者が破産を申し立てた。

 同社は「破産原因を争う」として事業を続けたが、裁判所が下した判断は「否」であった。

 福島復興という理念を掲げて事業を開始したものの、設立わずか2年弱で破産した福島電力。今となっては、収益の一部をきちんと福島復興に還元していたかも疑わしい。ピーク時5万を超えたと見られる電気契約者の大半は、破産前に他社へと契約を切り替えていた。契約者の間で、破産による混乱がさほど広がらなかったことだけが不幸中の幸いだ。
(文=帝国データバンク情報部)

<企業情報>
福島電力(株)
住所:福島県いわき市平六町目1−14
代表:宮川真一氏
資本金:9500万円
年売上高:約8億4600万円(17年9月期)
負債:約2億2100万円



日刊工業新聞2018年9月11日

松木 喬

松木 喬
09月15日
この記事のファシリテーター

新電力の損益分岐点は5000kwと言われています。契約が1000社や5万社と書いているので採算ライン超えだったと思われます。他の報道にもありますが、業務拡大に体制が追いつかなかったのでしょう。無理やり数字を追うと歪みが出るのはどの業界も一緒。大手電力の価格攻勢がすごく、安さだけでも勝負できなくなった。本来なら「福島」が価値(ブランド)となってコスト以外の競争力になるはずですが。

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