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低迷する太陽電池事業、シャープが繰り出すテコ入れあの手この手

原料転売を解禁、余剰電力はDCなどで活用
低迷する太陽電池事業、シャープが繰り出すテコ入れあの手この手

太陽電池市況の低迷で戦略を見直す

 シャープは低迷する太陽電池事業の原料と生産用電力の調達について戦略を変更した。原料のポリシリコンは購入後の転売が原料調達先との契約で禁止されていたが、その条項をなくした。また契約残高を約半分に引き下げ、調達負担を大きく減らした。一方の電力は先行きの不足を織り込み、解約できない長期契約を結んでいたが、想定より生産が縮小し、過剰状態にある。そこで自社データセンター(DC)などで余剰電力を使う。太陽電池は市況が低迷し販売が縮小しているため戦略を見直す。

 シャープは太陽電池を液晶ディスプレーと並ぶ中核事業に育てるため、原料などの確保に長期契約を結んでいた。だが現状は太陽電池の市況が悪化し、契約自体が経営の足を引っ張っている。

 ポリシリコンは親会社の台湾・鴻海精密工業の協力により、転売禁止とした契約を変更し条項をなくした。2017年度末のポリシリコン契約残高を前年度末比で半分近い約8300トンに削減。過剰分を外販できるかは不明だが、調達量を含めて契約の拘束力は緩和されたとみられる。

 他方、シャープは29年ごろまで中途解約できない電力契約を抱える。生産用の電力の一部をDCなどに振り向ける。同社は太陽電池を生産している堺事業所(堺市堺区)に自社専用のDCを構築し、IoT(モノのインターネット)家電などから集めたデータの保存に使っている。

 今後、医療や防犯といった分野にフルハイビジョンの16倍の解像度を持つ8K画像を使った新事業を展開する計画で、DCを拡張することになっている。

 さらに今秋、堺事業所で量産する有機ELパネルにも契約電力を割り当て、縮小傾向にある太陽電池に代わる利用先を確保する。
日刊工業新聞2018年9月5日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
これまでシャープは結果として市場価格より割高な原料と電力を調達し、15年ごろの経営危機につながった。京セラも18年3月期、同様に割高な原料契約を理由に約500億円の引当損失を計上。太陽電池業界全体の負の遺産となっている。 (日刊工業新聞大阪支社・平岡乾)

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