父の「思い」に応えたい―娘が語る“お家騒動”ではない事業承継の現実
「現状維持は衰退の始まり」二人の女性経営者が挑む経営革新に迫る
若手経営者へのメンタル面の支えも必要
中小企業経営者の平均引退年齢は70歳前後。今後10年間でおよそ半数の企業が事業承継のタイミングを迎えるとみられることから、政府は関連施策の充実を図ってきた。例えば中小企業の後継者が現経営者から非上場株式を承継する際の相続税や贈与税を軽減する事業承継税制。早期からの計画的な準備を促すことで円滑な承継を後押しする狙いだ。
だが、衆議院経済産業調査室が15年3月にまとめた調査によると、現社長の引退を連想させる事業承継は、「センシティブな問題」だけに経営者の家族ですら口にするのは容易ではないと指摘。後継者教育にかける時間的な余裕もないといった声も相次ぐ。実際、今回取り上げた2社も、現経営者の突然の病という「青天のへきれき」によって急きょ、社内体制を整えてきたのが実情だ。
であるならば、早期からの計画的な準備を促すだけでなく、承継直後の若手経営者を実務のみならずメンタル面でどう支えるかにも目を向けるべきではないか。西澤社長も図子田社長も技術はともかく「ビジネスは他社の経営者から学んでいる」と語る。「先代が培ってきた技術や顧客との信頼関係を守り発展させたい」(図子田社長)の一念で、経営者という重責を担い日本のモノづくりを支えようとしているのだから。
(文=神崎明子)
日刊工業新聞07月21日深層断面