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バイオマス向けボイラ事業買収から1年、住重の正念場

需要減の懸念多く。「スマートボイラ」でサービス事業拡大へ
バイオマス向けボイラ事業買収から1年、住重の正念場

サミット半田パワー(愛知県半田市)に納入したCFBボイラ

 住友重機械工業が英エイメックフォスターウィラー(AFW)傘下の循環流動層(CFB)ボイラ事業を約200億円で買収してから約1年。CFBボイラ市場での地位を盤石にするべく、シナジー最大化を急ぐ。ただ、バイオマスといえども火力発電に対する向かい風は強く、燃料価格の上昇や再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)の買い取り価格引き下げに伴う国内需要減など懸念材料も少なくない。

 2020年初頭にも英国で商業運転を始める出力30万キロワット級大型バイオマス専焼発電所。住重が買収し子会社化したフィンランドのSumitomo SHI FW(SFW)が中核のCFBボイラを供給しており「世界に向けて良いアピールになる」(住重の小島英嗣取締役常務執行役員)と期待する。FITに頼らず採算を確保するには、大規模プラントによる発電コストの引き下げが有効。日本でも今後、需要が期待できる。

 CFBボイラは底部から空気を吹き込み、高温の粒子と燃料を均一に浮遊混合させることで多様な燃料を高効率に燃焼。バイオマスや低品位燃料を安定燃焼し、燃料の微粉砕が不要などの特徴を持つ。住重は国内シェア6割を握っており、世界首位のSFWをグループ化したことで確固たる地位を確立した。

 SFWはCFBボイラの源流を汲み、最大80万キロワット級のプラントにも対応する技術力を持つ。欧州をはじめ、世界でブランドが浸透しており「社名にFW(フォスターウィラー)は残した方が良い」(小島取締役)。

 住重単体のボイラを含むエネルギー環境事業部門とSFWの規模はほぼ同等。18年度は合算して900億円弱を見込み、20年度の1000億円を射程に入れる。その先の成長をどう描くかが課題だ。

 両社は「ストラテジックビジネスデベロップメント」と呼ぶ情報交換会議を設け、アジア市場などでの重複を回避しているほか、サービス工場の一つとしてSFWのタイ拠点を相互利用する方針。

 今後の焦点は研究開発でのシナジー。住重は17年12月、愛媛県新居浜市の拠点に数億円を投じた新たな燃焼試験設備を完成。ここでのSFWとの共同研究などを検討する。

 SFWが掲げる「スマートボイラ」構想。ボイラの安定稼働をサポートするシステムとして、IoT(モノのインターネット)技術を用いてプラントの運転状況を把握。計画外停止を防ぎ、高いボイラ稼働率を確保するものだ。顧客価値に貢献する次世代メンテナンス技術は住重も国内プラントで実証に乗り出しており、両社のノウハウを組み合わせサービス事業を拡大する考えだ。

 ただ、火力発電の向かい風はやまない。ニッチ市場とはいえ、今後は三菱日立パワーシステムズ(MHPS)など大型ボイラメーカーとの競合も予想される。視界良好とは言い難い。
(文=鈴木真央)
日刊工業新聞2018年8月23日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
「CFB以外のボイラや集塵機などの環境機器、水分の多い燃料を燃やす技術など周辺を広げていく」(小島取締役)とともに、インドや中東、アフリカなどに戦線を広げ、持続成長を目指していく。 (日刊工業新聞・鈴木真央)

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