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創業80年超の老舗水産業者、サンマ不漁に勝てず倒産

太洋産業 最初は東日本大震災で大きな痛手
 かつて300億円を超える年商を上げる優良企業であった太洋産業は、2018年7月9日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。創業80年超の老舗水産業者はなぜ倒産したのか。

 同社は東日本大震災の被災企業。11年3月11日に岩手県の大船渡工場が大津波の被害に遭い、全壊した。釧路と根室にも工場を有していたが、大きな痛手となった。

 残った2工場のみでは生産体制に無理が生じていたため、被災地域の復興状況をうかがいながら大船渡工場の再稼働を決断。工場の再建には約4億5000万円の費用が生じた。

 大半は岩手県からの補助金にて賄うことができたが、それでも約5600万円の資金負担が発生、これが経営の足かせとなり厳しい資金繰りを強いられていた。

 大船渡工場を本格稼働できるようになったのは15年11月頃。3工場をフル稼働させて売上高を伸ばし、利益を確保する計画であったが、再び災難が訪れる。

 主力製品であるサンマが不漁で、仕入れ価格が高騰したのだ。巻き返しを図るべく設備投資したタイミングでの不運である。16年3月期は年売上高約76億8300万円に対し、営業損失約2億5400万円、経常損失約3億6100万円を計上。

 復興関連の補助金などを特別利益として計上し、なんとか最終損益は黒字となっていたが、補助金頼みの厳しい経営が続いていた。この間、金融機関と協議しながら再建を模索していたが、18年明け頃に単独での再建は困難であると判断。

 3月からスポンサー募集を開始し数十社に打診したが同じく不漁に悩む同業者からの支援を受けられず、自主再建を断念した。

 破たんに至った直接のきっかけは東日本大震災とその後の不漁で、いずれも自然現象によるものだ。折しも猛暑や豪雨などこれまでの常識と比べると異常ともいえる気候が続く中、こうした外部環境にも目を配りたい。
(文=帝国データバンク情報部)
<会社プロフィル>
太洋産業(株)
住所:東京都中央区築地6−16−1
代表:松岡章氏
資本金:1億円
年売上高:約66億2500万円(18年3月期)
負債:約49億4500万円
日刊工業新聞2018年7月31日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
「サンマは庶民の食べ物」というにはもう昔の話。乱獲で絶滅危惧種に指定されたニホンウナギや、生息量の減少が懸念されるクロマグロ…。魚好きとしては、漁業が少しでも安定業種になるようにテクノロジーを駆使してもらいたい。

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