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テントウムシ卵巣の凍結保存に成功。絶滅危惧種を救えるか!?

多様な昆虫の遺伝子資源を保存
テントウムシ卵巣の凍結保存に成功。絶滅危惧種を救えるか!?

テントウムシの卵巣凍結保存の手順と、凍結卵巣由来の子孫を得るまでの一連の流れ(基礎生物学研究所提供)

 基礎生物学研究所進化発生研究部門の川口はるか特任研究員らは、テントウムシの卵巣の凍結保存技術を開発した。幼虫から卵巣を取り出し、凍結保護剤で処理して液体窒素中で凍結保存する。解凍後に別の幼虫に移植すると、凍結卵巣由来の子孫を残せた。卵巣の凍結保存、移植はカイコなどに続くもので、昆虫の遺伝資源保存につながる。

 川口研究員らは虫ピンによる幼虫の固定や培養液中で解剖したうえ、卵巣から伸びる輸卵管と糸状の器官を絡めて卵巣移植した。幼虫は成虫まで育ち、受精卵を産卵した。

 さらに摘出した卵巣を凍結保護剤で処理して、液体窒素で凍結保存後に交配させても受精卵を産卵した。ふ化した幼虫を成虫まで育てるとドナー由来の斑紋を持ち、卵巣の凍結保存を確立した。

 日本蚕糸学会が発行する昆虫テクノロジーの国際誌ジャーナル・オブ・インセクト・バイオテクノロジー・アンド・セリコロジーに掲載された。
                

(2018年7月25日)
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
昆虫はロボット研究や社会性研究など、他分野からも注目されています。ただ、研究の進んでいる昆虫は、「モデル昆虫」と呼ばれる飼育や繁殖のさせやすいカイコやショウジョウバエが中心。人工繁殖の難しい昆虫もいます。今回、テントウムシの遺伝子保存に成功したことで、多様な昆虫の遺伝子保存に向けて前進できたということです。

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