絶滅危惧種、シマフクロウを守れ!野鳥の会と富士通の保護大作戦

音声認識プログラムで声を抽出、数の把握が格段に早まる

 オスが「ボボ」と鳴くとメスが「ブ」を鳴き返す。シマフクロウのつがいの鳴き交わしだ。夜、暗い森に響く鳴き声からシマフクロウの数を確認できる技術を富士通が開発した。

 シマフクロウは両翼の幅が2メートル近くになる巨大フクロウ。日本では北海道で140羽の生息しか確認されておらず、環境省レッドリストで絶滅危惧IA類に指定されている。

 日本野鳥の会は長年、シマフクロウの保護に取り組んでいる。会の会員でもある富士通環境本部グリーン戦略統括部の畠山義彦氏は「保護には生息域を知り、生息数を知ることが大事」と話す。だが、シマフクロウは夜行性なので姿を確認すること自体が難しい。

 そこで野鳥の会は、ICレコーダーを山中に置いて夜間に3時間録音し、再生した鳴き声から数を把握していた。音の波形を画面上に表示し、シマフクロウの声を見分ける調査もしていた。だが、人の耳と目に頼るので早送りしてもICレコーダー1台の調査に1時間かかっていた。

 富士通が開発した音声認識プログラムは音声データを入力すると、周波数からシマフクロウの声を抽出し、瞬時に数を解析する。ICレコーダー1台の解析時間は数分だ。

 野鳥の会は人の作業だと7地域49地点の解析に3カ月かかることがあった。富士通の技術だと18地域142地点に広げても解析は2週間で済み、調査効率が飛躍的に高まった。

 2組のつがいが同時に鳴いても、聞き分けられるのも強みだ。人だと1組2羽にしか聞こえないが、音声認識プログラムで2組4羽がいることも分かるようになった。

 プログラムで行動範囲を調べると、日本製紙の社有林を生息域としていることも判明。野鳥の会と日本製紙は2015年に覚書を結び、繁殖期に伐採しないなどを取り決めた。

 「シマフクロウはアイヌの村の守り神だった。今は人が守る立場になった」(畠山氏)という。情報通信技術(ICT)の活用で人の調査が効率化されれば、保護できるシマフクロウも増える。いずれ、シマフクロウを守り神とする文化も復活する。

 富士通は本業のICTによる生物多様性保全に取り組む。シマフクロウの音声認識プログラムは、グループ会社が研究していた携帯電話の音声認識技術が生かされた。他にも携帯電話のカメラで撮影した画像データを地図と結びつけ植物の生息地図を作る技術もあり、自然保護団体や研究機関が活用している。

日刊工業新聞2016年10月25日

明 豊

明 豊
10月27日
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生物多様性でICTが果たせる役割は相当に大きい。すぐに大きなビジネスに結びつくわけではないが、それに関わった人が増えれば、新たな気づきや感性が企業の資産にもなるはず。

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