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クラフトビール人気の裏にキリンのCSV活動あり

ホップで新規就農支援
クラフトビール人気の裏にキリンのCSV活動あり

国産ホップの収穫作業(遠野市)

 キリンホールディングスは、2012年からCSR(企業の社会的責任)に替わり、CSV(共有価値の創造)に取り組んでいる。(1)健康(2)地域社会(3)環境―の三つの社会課題の解決に取り組む。新たな価値を生み出すとともに企業としての責務を果たし、企業価値を向上させる。溝内良輔常務執行役員に聞いた。

 ―なぜCSVに取り組むことになったのですか。
 「11年の東日本大震災で当社の仙台工場が被災したことがきっかけ。東北の復興を進める上で、『地元を元気にするには事業性がないと続けられない』と感じた。拡大再生産の考え方と言える」

 ―キリンならではの取り組みは。
 「酒類を扱う企業として、まず商品・サービスを通じて社会とのつながり『絆』を深める。一方でマイナス面であるアルコール問題を最小化する。当社は酒類メーカーでは珍しい医薬事業を持つ。この強みを生かし病気の回復といった社会貢献も行う」

 ―地域社会の具体的な活動で、ビール原料の国産ホップの栽培支援や日本ワインの育成などがあります。
 「キリンの事業に関わる地域を支援・活性化することで、それぞれの原料が安定して生産されるようになれば、我々にもベネフィット(恩恵)がある。国産ホップの支援はずっと取り組んできたが、CSVに移行してさらに本格化している」

 ―国産ホップの栽培は順調に進んでいるのですか。
 「農家の高齢化と後継者不足で減り続けてきた経緯がある。当社は主に岩手県遠野市と秋田県横手市で、栽培の支援や新規就農者のリクルート協力、需要元となるクラフトビールの育成などを行ってきた。ここにきて遠野で7人、横手で2人の新規就農者を確保できた。クラフトビールの原料として、特徴ある国産ホップに対するニーズが高まっており、就農者減少にブレーキがかかることに期待している」

 ―環境での取り組みはどうですか。
 「グループ全体で、温室効果ガスの排出を30年までに、15年比で30%削減を目指している。燃料消費を抑え、省エネを実現すれば最終的に利益につながる」
(聞き手=井上雅太郎)
日刊工業新聞2018年7月20日
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
人気の高いクラフトビールづくりの背後に、こういった活動があったことを初めて知りました。

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