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クルマは逆風も、スバルの航空機は軍需も民需も大攻勢

陸自ヘリを民間に転用「空でしっかりとブランドを確立する」
クルマは逆風も、スバルの航空機は軍需も民需も大攻勢

UH-X(防衛省より)

 完成検査不正問題で信頼も失墜したSUBARU。新車販売でも影響が出ている。一方で航空機事業は勢いがある。常務執行役員航空宇宙カンパニープレジデント・戸塚正一郎氏に戦略を聞いた。

 ―英ファンボロー国際航空ショーに出展します。見所は。
 「米ベル・ヘリコプター・テキストロンと国際共同開発している民間ヘリコプター『412EPI発展型機』の模型を展示する。陸上自衛隊向け新型多用途ヘリ『UH―X』の民間転用機で、着手から3年を経る中、開発は順調に推移し、技術試験をほぼ終えた。水面下の引き合いは多く、アジアを中心に新市場を開拓する」

 ―量産に向けた投資計画は。
 「1月に宇都宮製作所(宇都宮市)にUH―X向け整備工場を完成した。18―19年度にかけて防衛、民間で各150機生産できる体制を整える。複合材ローターブレード工場を設置する。これまでの民間完成機事業は消化不良で終わった。持続的なビジネスとして成立させ、空でもしっかりとSUBARU(スバル)ブランドを確立する」

―米ボーイング向け機体製造の状況は。

「2月に『777X』初号機の中央翼、主脚格納部を組み立てて出荷し、不具合ゼロのお墨付きをもらった。過去の教訓を生かし、ボーイングと協力して取り組んだ結果だ。『787』向けは月産14機に向けて準備中だ」

 ―IoT(モノのインターネット)を活用した生産性向上の取り組みは。
 「SAPS(スバル・エアロスペース・プロダクション・システム)と銘打ち、航空機生産ならではの多品種少量生産や複合材、大型構造物インテグレーションなどの強みに、自動車生産ノウハウを融合した生産手法を確立する。情報通信技術(ICT)を活用して情報とモノを一致させ、設計から生産、出荷までの一元一貫管理を実現する。チタンなど難削材を扱うサプライヤーを育てたい」

 ―設備投資は年100億円規模が続きそうですか。また、技術開発の方向性は。
 「UH―Xの量産をはじめ、高水準な投資は続く。事業参画を検討する(ボーイングの将来の中型旅客機構想の)『NMA』や防衛省の将来の戦闘機、無人機、将来のモビリティーなど技術開発に磨きをかける。防衛装備庁航空装備研究所から受注した『IR―OPV』を年内に飛行試験する計画。赤外線センサーを搭載した無人機システムの試作機だ」
開発を進めている民間機「412EPI発展型機」

戸塚正一郎氏
日刊工業新聞2018年7月16日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
政府が実用化に本腰を入れる「空飛ぶ車」。自動車と航空機の両事業を持つスバルは、すでに人が乗れるサイズの無人機システムを手がけており、将来のモビリティー市場に最も近いポジションにいる。民間完成ヘリコプター事業への再進出など「空」の領域で「SUBARU」ブランドは一段と飛躍するだろう。 (日刊工業新聞・鈴木真央)

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