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きょうは「海の日」、深海探査の競争激化

解明まだ3割、創薬に応用も
きょうは「海の日」、深海探査の競争激化

しんかい6500(海洋機構提供)

 16日は海の日。国民の祝日に関する法律によると、海の恩恵に感謝し海洋国日本の繁栄を願う日とされている。近年、日本の海に眠る海底資源に注目が集まる。

 最近の海洋に関するキーワードは「深海」だ。深海は海面から200メートル以深の海域を指し、海洋の大部分を占める。海洋研究開発機構の東垣(あずま・わたる)理事(開発担当)は「衛星による海底地形図から世界の海は3割ほどしか分かっていない」と、海について知られていない現状を明かす。

 日本は深海に囲まれており、黒潮やプレート(岩盤)のぶつかりなどの多様な環境が存在する。海洋資源や環境、地震や津波などの災害、多様な生物など研究課題は豊富だ。こうした課題を解決することで日本は海洋研究において世界で優位な地位を占めていた。だが近年、今まで養殖のために沿岸地域での海洋研究が盛んだった中国が深海の研究にシフトするなど深海探査の国際競争が激しくなっている。

 日本人は地震を常に身近な問題と捉えているが、その地震の備えにおいても深海がカギとなるかも知れない。海洋機構では海面下5000メートルを掘削しセンサーを設置する計画を立てている。

 紀伊半島沖で防災科学技術研究所が展開する地震・津波観測監視システム『DONET』とセンサーを接続し、地震発生の早期通報や予測精度の向上につなげる。地球深部探査船「ちきゅう」を利用し、18年度中に掘削を始める予定だ。

 また海洋機構は深さ6500メートルの海域まで潜れる有人潜水調査船「しんかい6500」で多くの海洋調査を実施。海底生物の調査など多くの基礎研究を支えてきた。最近では、微生物を含むと考えられる海底の堆積物を一部の企業や大学などに提供する取り組みを行っている。薬の候補物質となる代謝物を作る微生物が見つかれば、海洋研究の成果を創薬という産業応用に生かせるかもしれない。

 今後、水深6500メートルより深い海域を探査し新しい科学的知見の獲得を目指す。平朝彦海洋機構理事長は「18年度は水深6500メートル以深の深海探査を可能とする技術開発の最初の年にしたい」としている。
最新鋭の研究船「かいめい」(海洋機構提供)

(文=冨井哲雄)
日刊工業新聞2018年7月16日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
日本は領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせ世界第6位の海域面積を持つ。政府は5月、2018―22年度の海洋政策の指針「第3期海洋基本計画」を閣議決定した。海洋の産業利用の促進や海洋環境の維持・保全などを盛り込んだ。海洋の研究開発の取り組みは今後活発化するだろう。 (日刊工業新聞・冨井哲雄)

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