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「東京の水をくみ出す能力、1時間で降雨50ミリが限界」

リバーフロント研究所・土屋氏 、巨大洪水の被害予想は62兆円
「東京の水をくみ出す能力、1時間で降雨50ミリが限界」

写真はイメージ 

 東京で集中豪雨が起きればどうなるのか―。東京都や東日本大震災の災害対策研究に取り組んできた土屋信行リバーフロント研究所技術参与に東京の現状を聞いた。

 ―東京で今回と同様の豪雨が起きた場合に想定される被害は。
 「東京は(中央部に)海抜ゼロメートル地帯が存在する洗面器のような地形で、洗面器の底に政治・経済の中枢機関が集中している。また東京の水をくみ出す能力は1時間当たり50ミリメートルの雨しか耐えられない。東京で同様の豪雨が起きれば、他の地域とはレベルの異なる被害が発生する」

 ―具体的には。
 「土木学会が6月に公表した調査によると(東京都東部を流れる)荒川で巨大な洪水が発生すれば被害額は62兆円になる。関東地方に被害をもたらした1947年のカスリーン台風では、荒川などに洪水が発生し1000人超の死者を出した。東京が安全に見えるのは間違いだ」

 ―必要な対策とは。
 「ハード面の対策が足りない。特に足立区や江戸川区など荒川の東にある海抜ゼロメートル地帯には、避難できる高い建物が少ない。安全に逃げられる高台づくりと、スーパー堤防など氾濫しにくい治水対策が重要だ。また企業や官公庁、病院は水害事業継続計画(BCP)を策定すれば被害を減らせる」
 (聞き手・敷田寛明)
リバーフロント研究所・土屋氏
日刊工業新聞2018年6月10日
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
7月の西日本豪雨並み雨が降ると、やはり東京は耐えられないんですね。豪雨が発生することを前提とした対策を、個人や企業、自治体、国などさまざまなレベルで考える必要があります。

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