【5Gの未来】プロ野球のライブ観戦が自由自在な視点で楽しめる

自由視点映像のリアルタイム配信、KDDIが公式戦で実証

 スーパープレーを自由な視点でもう一度―。KDDIは第5世代通信(5G)を活用した新たなスポーツ観戦の形を生み出そうとしている。試合の重要な場面などの映像をスタジアムの観客がモバイル端末で視点を自由に変えながら視聴できるようにする。2020年の商用化を目指す5G。それを活用した映像サービスは、スタジアムでのスポーツ観戦をより楽しくできるか。

 KDDIは5Gを活用し、プロ野球の公式戦で自由視点映像のリアルタイム配信に成功した。那覇市の沖縄セルラースタジアム那覇で27日に開かれたプロ野球の一戦で、バックネット裏の10人分の観客席にタブレット端末を設置。同端末にバッターボックスを中心とした映像をリアルタイムに映しだした。端末を操作すれば、映像を自由にズームしたり角度を変えたりできる。リプレイ再生も可能だ。KDDIはこの映像システムにより、バックネット裏の観客席に座りながら野手がヒットを打った瞬間などを三塁側や一塁側からの視点で視聴できることを実証した。

 映像配信システムは高速・大容量の特徴をもつ5GとKDDI総合研究所(埼玉県ふじみ野市)が開発した自由視点映像技術(※)を組み合わせて実現した。高精細な4Kカメラ16台で撮影した映像を基に自由視点の映像を即座に生成。レフトスタンド近くに設けた実験用の5G基地局を経由して、サムスン電子が試作した5G対応のタブレット端末に配信した。映像のデータ容量が大きいため既存の4Gでは対応できなかったという。

 KDDIはこのシステムを活用し、5Gを生かした映像サービスの提供を目指す。同社モバイル技術本部の松永彰シニアディレクターは「まったく新しいスポーツ視聴体験が提案できる」と自信を見せる。

 一方、商用化に向けてサービス設計は課題になる。たとえ価値の高い映像であってもスタジアムの観客が目の前の試合を横目にタブレット端末の映像を視聴するかは未知数だからだ。松永シニアディレクターは「観客が常時端末を視聴することは想像しにくいだろうが、(走者と野手が接近する)クロスプレーなど重要な場面のリプレー映像を自由に視点を変えながら再生できるサービスは需要が見込める」と強調する。KDDIはこうした観点を含めて映像サービスの形を検討する。
 
 5Gを巡って携帯大手各社はエンターテイメントや建設、自動車など多様な分野で実証実験を繰り返し、現場の需要に応えるサービスを模索している。スポーツ観戦の映像サービスも観客の需要の把握が商用化のカギを握る。

KDDI総合研究所の自由視点映像技術ってなに?


 複数のカメラ映像を基に選手などの被写体の3次元(3D)映像を生成し、別途、作成しておいた背景の3D映像と組み合わせて自由視点の映像を作り出す。技術開発を担当するKDDI総合研究所超臨場感通信グループの内藤整リーダーは「カメラのない場所からの映像も生成できる」と技術の強みをアピールする。

 今回の実証では主にバッターとキャッチャー、審判の3人を被写体として抽出し、自由視点映像を生成した。サッカーなど抽出すべき被写体が多い団体競技になると、リアルタイムの生成や配信が難しくなるという。

スタジアム内に設けられたサーバールーム。カメラ映像を基に自由視点映像を生成する

実験用に設置された5Gの基地局

沖縄セルラースタジアム那覇で実証した

日刊工業新聞2018年6月29日に加筆

葭本 隆太

葭本 隆太
06月29日
この記事のファシリテーター

リアルタイム(実際には0.5秒程度の遅延)の自由視点映像を体験しました。素直に面白いと思いました。一方、スタンドが盛り上がったときには、やはりグランドの方に自然と目が向いてしまいます。サービスの商用化という意味では、どんな映像をどのタイミングで観客に見てもらうのかの設計が重要になりそうです。また、スタジアムでは28ギガヘルツ帯の電波を活用して5Gのエリア化をしているのですが、高周波数帯の電波は直進性が高く、例えばアンテナと端末の間に人が立つと電波を遮ってしまい、うまく映像配信ができなくなるそう。5Gの実用化という意味でも課題が出た実証だったようです。

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