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大手アパレルに寄りそった専業下請けが倒産、1社偏重にご用心

どんなに勢いのあったブランドでも転換期
大手アパレルに寄りそった専業下請けが倒産、1社偏重にご用心

写真はイメージ

 同じ下請業者でも、“大手企業の専業下請”と聞くと、焦げ付きリスクが低く、安定した受注を得られる「いい会社」だと想像されがちだ。しかし、現実はそう甘くない。専業下請けの経営リスクは実は高い。

 カネサは、1934年の創業。東京浅草の地で、ハンドバッグの製造業者として事業を興した。「女性を麗しく飾ることの喜び」を信条として、細部まで妥協を許さないモノづくりへの姿勢が、顧客から高い評価を得ていた。

 だが、経営環境は時の流れとともに変化していく。97年には三代目・佐々木康博氏が経営を引き継いでいた。同氏のもとで進められたのは、勢いのある大手アパレルブランドに寄り添い、受注を増やしていくという営業スタイル。

 若い女性に人気が出てきた某新興アパレルブランドとの関係を深め、いわゆる専属下請の立ち位置を確保したことで、2015年6月期決算は年売上高約9億2600万円まで拡大した。

 盲点だったのは、アパレルブランドにも“賞味期限”があるという事。世界的人気ブランドのように永く顧客に愛され続けている事例はあるものの、これはごく一部の例で、どんなに勢いのあったブランドでも転換期は訪れる。

 この得意先ブランドも近時は業績が落ち込み、2期連続で最終赤字を計上した。すると、同時期よりカネサの受注量も連鎖する形で激減、17年6月期は売上高約4億7400万円まで落ち込んだ。

 ここまで一気に受注が落ち込むと、固定費が賄えなくなり経営計画はとん挫する。1社頼りの下請業者は、受注元に対してどれほどの価格交渉力を持っていたのだろうか。利益の積み立てが薄く、資本余力が乏しいカネサは、18年4月24日に民事再生法の適用を申請した。

 取引先を1社に偏重するのは、リスク分散されていない危うい経営スタンスだという事を忘れてはいけない。
(文=帝国データバンク情報部)
(株)カネサ
住所:埼玉県川口市川口5−15−7
代表:佐々木康博氏
資本金:1000万円
年売上高:約4億7400万円(17年6月期)
負債:約1億2200万円
日刊工業新聞2018年6月12日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
受注元よりもシビアにブランド力や消費者動向を見ておく必要があったのでしょうか。

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