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「矢印」と「箱」で論理透明度を上げる【文章ゼミ#6】

パラグラフの機能とパラグラフ間の関係を意識する
この記事のポイント
1、フローチャートを参考にする
2、論理展開がうまくいっているかどうか確認する方法
3、良い論理展開の効能



 文章をはやく書けても分かりにくくては意味がない。反対に,論理透明度を高くするのが速く書くコツである。透明度を上げるには論理の流れを見やすくすることで,このためには、プログラミングの流れ図(flowchart)のように文章を構成するやり方がある。

 フローチャートは矢印と箱で構成されるが,箱に相当するのが「パラグラフ」である。日本の国語教育や英語教育の最大の問題点は,このパラグラフを教えないことである。日本語の句読点や段落はいい加減だ。小学校の作文の時間に先生から,「思いつくまま文章を書きなさい,文章が長くなったら息継ぎのため改行しなさい」と指導された方が多いと思う。段落で行を改めて一字下げるという形だけは教育するが,本質を教えてくれない(実は先生も知らない)。国語教育が段落の概念を曖昧にしている元凶である。

 日本語は膠着語(*)で,「てにをは」という強力接着剤を使って文章を書くので,段落を上手に入れないと論理フローが見えなくなる。中国語は「てにをは」がない孤立語(*)で,文法と論理にしたがって単語を煉瓦のように積み重ねるので,この危険が少ない。
*こうちゃくご・・・言語の形態的類型による分類の一つ。実質的な意味をもつ単語あるいは語幹に,文法的な機能をもつ要素が次々と結合することによって,文中における文法的な役割や関係の差異を示す言語。朝鮮語トルコ語日本語フィンランド語など。

こりつご・・・これも言語の形態的類型による分類の一つ。単語が文中で使われる時,屈折や膠着の手続きなしに用いられる言語。文法的な機能は配列の順序によって決まる。中国語やタイ語など。
 パラグラフは一つの主張からなる論理ブロックである。プレゼンテーションのスライドの1枚分と考えればよい。パラグラフの冒頭に,スライドのタイトルに相当する主題文(Topic Sentence、Focus Sentence)があり,そのあとに複数の裏付け文(詳細説明文、Supporting Sentences)が続く。
パラグラフ・ライティング/パラグラフ・リーディング

 Topic Sentenceだけ拾い読みしてあらすじを飲み込めれば,論理展開がうまくいっている証拠である。Topic Sentenceが上手に書かれていると,速読や飛ばし読みも可能になるので,読み手の効率も向上する。良いこと尽くめである。

 分かりやすいパラグラフの例として,Topic Sentenceが「二等三角形ΔABCの両底角は等しい」という幾何学の命題の時,Supporting Sentencesはその証明となり以下のように続く。
主題文と裏付け文の例

 ただし,簡単な内容の短い文書では,パラグラフ内の文章を主題文と裏付け文に無理やり因数分解するよりも,スムーズな流れを優先した方がよい。

次回:#7 はやく書くためのテクニック (公開予定日6月25日)
この連載について
筆者プロフィール:廣田幸嗣(ひろた・ゆきつぐ)
1946年生まれ。1971年、東京大学工学系研究科電子工学修士課程修了。同年,日産自動車入社。同社総合研究所でEMC,ミリ波レーダ,半導体デバイスなどの研究開発に従事。この間,商品開発本部ニューヨーク事務所に3年間駐在。2015年3月まで,日産自動車で技術顧問,カルソニックカンセイでテクノロジオフィサ,放送大学非常勤講師。
人工知能学会理事,技能五輪シドニー大会電子組立エキスパート,東大大学院非常勤講師などを歴任。

主な著書
「とことんやさしい電気自動車の本 第2版」 (日刊工業新聞社)
「ワイヤレス給電技術入門」 (共著,日刊工業新聞社)
「電気自動車の制御システム」 (編著,東京電機大学出版局)
「電気自動車工学」 (編著,森北出版)
「パワーエレクトロニクス回路工学」 (編著,森北出版)
「バッテリマネジメント工学」 (編著,東京電機大学出版局)
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
小中学校で習った証明は、文章力にも繋がる勉強だったのですね。

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