スマートファクトリーの要諦を話そう!
「スマートファクトリーアワード2018」に旭酒造・YKKなど6社選定
IoT(モノのインターネット)などを用いた先進的なモノづくりをたたえる第1回「スマートファクトリーアワード2018」の表彰式が、30日開幕した「スマートファクトリーJapan2018」の会場内で行われた。旭酒造(山口県岩国市)、旭鉄工(愛知県碧南市)、ジェイテクト、武州工業(東京都青梅市)、ブリヂストン、YKKの6件を表彰した。
受賞各社は製造現場のIoT活用をはじめとした取り組みの成果やユニークさが評価された。日本酒の国際的ブランド「獺祭(だっさい)」で知られる旭酒造は、データを駆使した再現性の高い製造法を確立し、酒造りの新境地を切り開いている。桜井一宏社長は「データも機械も人手も全ておいしい酒を造るための道具」とした上で、それら3者が調和する「日本的なスマートファクトリー」の考えを紹介した。
一方、YKKは国内外のファスナー工場を情報システムでつなぐ「YKKIoTモデル」を構築。コスト削減、リードタイム短縮、予防保全などを可能にしている。授賞式の後には、受賞企業の代表によるトークセッションが行われた。
受賞企業の取り組みを過去記事で紹介
【トークセッション登壇者】
・櫻井一宏氏(旭酒造株式会社 代表取締役社長)
・木村哲也氏(旭鉄工株式会社 代表取締役社長 / i Smart Technologies株式会社代表取締役社長CEO )
・青能敏雄氏(株式会社ジェイテクト 工作機械・メカトロ事業本部技監)
・林英夫氏(武州工業株式会社 代表取締役)
・大谷渡氏(YKK株式会社 取締役・副社長)
【モデレーター】
・藤元正(日刊工業新聞社 モノづくり日本会議実行委員会 委員長)>
藤元 櫻井さんは、旭酒造はスマートファクトリーの定義から少し外れていると。
櫻井 スマートファクトリーというと、効率化、合理化、省人化を目指していると思う。しかし、私たちの酒蔵は同量の酒を造る酒蔵の1.5~2倍の人員を配置している。人と機械を置き換えるという意識は全くない。あくまでも美味しい酒を造るということが私たちの至上命題。人と機械とデータを全て統合する、日本的なスマートファクトリーと言えるのではないか。
藤元 ジェイテクトは「人が主役のスマートファクトリー」と謳っている。
青能 工作機械の分野では、まだまだ人間の手による匠の技が必要。IoTは働く人を成長させるものでなければならないと思っている。設備と共に人も進化するシステムを目指している。
藤元 IoT導入のポイントは。
大谷 トップが指示しても現場の社員が動かなければ意味がない。だからIoTを活用することでどのような効果が生まれるのかを社員に示す。これを徹底的に行ってきた。そして全社員がIoT活用に向かって動いてくれたことが今回の受賞につながったと思う。
藤元 武州工業さんは社員全員がタブレット端末を使ってコンビニのPOSシステムのように情報入力を行い作業の見える化を行っている。中小企業における、社員の意識変革のポイントとは。
林 IoTに精通している必要はないが、経営トップが積極的に動かなければならない。人間が働く上で「記録を残す」というのは億劫になる分野。経営トップが率先して「やろう」と言わなければ、現場は動かないのがまだまだ現状だと思う。
林 そして全社員のIoT活用への参加意識を高めること。データを記録し活用することが、どのようにインセンティブにつながるかを表現することが重要。やはりインセンティブが無いと、社員はデータ入力を面倒だと感じてしまい継続できない。
青能 何のためにIoTを導入するか考えることが重要。課題が見えてもそれを改善できなければ「見える化」とは言ってはいけないのではないか。だから私たちはIoTを導入する前にお客様が何に困っているのか、どのようなKPIを達成したいのかをヒアリングすることに時間をかけている。お客様によってKPIは全然違ってくるので、ただIoTを導入すれば良いわけではない。
木村 人の手によって収集していたデータは標本でしかなかった。今はリアルタイムで膨大なデータを一覧することができる。じゃあデータを見ることで何ができるのか、そこをまだまだ突き詰めて考えていかなければならない。
藤元 今後自社のスマートファクトリーをどのように展開させていきたいか。
大谷 こういった取り組みには終わりがないので、継続することが何よりも重要。継続していく中で事業環境は変化していく。その時に過去の物事を全て是として見ないこと、掲げた目標を達成するために経営者から社員までが徹底的に自己変革していかなければならない。
林 日本の中小企業は非常に繊細で質の高いものづくりができている。でも儲からない。やはりバックヤードの生産性が非常に悪いのだと思う。だからバックヤードも含めた生産性を上げていくのが、日本のスマートファクトリーになってくる。
青能 改善は尽きることはない。舞台は現場だけではなく、設計や営業、間接部門の生産性向上にも取り組んでいく。グローバルに協業しながら日本版スマートファクトリーの構築に貢献していきたい。
木村 旭鉄工では80ラインの生産性が平均34%上がった。旭鉄工でできたので他の会社でもできないわけがない。ただいきなり導入というのは難しいと思うので、私たちがサポートをしたり、他社さんやコンサルの方と協力しながら多くの中小企業の生産性を向上させていきたい。そのためのソリューションの一つを5月31日に発表するので注目して欲しい。
櫻井 「良いお酒や大吟醸は神秘的なモノ、経験と勘と運によってしか造れないモノ」というのが酒造りの特徴だった。今ではそういったベールに包まれた部分を分析し、データとして蓄積していくことで、安定して高品質なお酒を造れるようになってきた。このシステムをさらに進化させていく。そうすると今度はデータとして扱えない、IoTを否定するような酒造りが生まれるかもしれない。スマートファクトリー化はそういった可能性も秘めている。私たちとしては怖いことでもあるけれど非常に楽しみ。
受賞各社は製造現場のIoT活用をはじめとした取り組みの成果やユニークさが評価された。日本酒の国際的ブランド「獺祭(だっさい)」で知られる旭酒造は、データを駆使した再現性の高い製造法を確立し、酒造りの新境地を切り開いている。桜井一宏社長は「データも機械も人手も全ておいしい酒を造るための道具」とした上で、それら3者が調和する「日本的なスマートファクトリー」の考えを紹介した。
一方、YKKは国内外のファスナー工場を情報システムでつなぐ「YKKIoTモデル」を構築。コスト削減、リードタイム短縮、予防保全などを可能にしている。授賞式の後には、受賞企業の代表によるトークセッションが行われた。
受賞企業の取り組みを過去記事で紹介
・櫻井一宏氏(旭酒造株式会社 代表取締役社長)
・木村哲也氏(旭鉄工株式会社 代表取締役社長 / i Smart Technologies株式会社代表取締役社長CEO )
・青能敏雄氏(株式会社ジェイテクト 工作機械・メカトロ事業本部技監)
・林英夫氏(武州工業株式会社 代表取締役)
・大谷渡氏(YKK株式会社 取締役・副社長)
【モデレーター】
・藤元正(日刊工業新聞社 モノづくり日本会議実行委員会 委員長)>
人を生かす日本版スマートファクトリー
藤元 櫻井さんは、旭酒造はスマートファクトリーの定義から少し外れていると。
櫻井 スマートファクトリーというと、効率化、合理化、省人化を目指していると思う。しかし、私たちの酒蔵は同量の酒を造る酒蔵の1.5~2倍の人員を配置している。人と機械を置き換えるという意識は全くない。あくまでも美味しい酒を造るということが私たちの至上命題。人と機械とデータを全て統合する、日本的なスマートファクトリーと言えるのではないか。
藤元 ジェイテクトは「人が主役のスマートファクトリー」と謳っている。
青能 工作機械の分野では、まだまだ人間の手による匠の技が必要。IoTは働く人を成長させるものでなければならないと思っている。設備と共に人も進化するシステムを目指している。
社員の意識改革
藤元 IoT導入のポイントは。
大谷 トップが指示しても現場の社員が動かなければ意味がない。だからIoTを活用することでどのような効果が生まれるのかを社員に示す。これを徹底的に行ってきた。そして全社員がIoT活用に向かって動いてくれたことが今回の受賞につながったと思う。
藤元 武州工業さんは社員全員がタブレット端末を使ってコンビニのPOSシステムのように情報入力を行い作業の見える化を行っている。中小企業における、社員の意識変革のポイントとは。
林 IoTに精通している必要はないが、経営トップが積極的に動かなければならない。人間が働く上で「記録を残す」というのは億劫になる分野。経営トップが率先して「やろう」と言わなければ、現場は動かないのがまだまだ現状だと思う。
林 そして全社員のIoT活用への参加意識を高めること。データを記録し活用することが、どのようにインセンティブにつながるかを表現することが重要。やはりインセンティブが無いと、社員はデータ入力を面倒だと感じてしまい継続できない。
青能 何のためにIoTを導入するか考えることが重要。課題が見えてもそれを改善できなければ「見える化」とは言ってはいけないのではないか。だから私たちはIoTを導入する前にお客様が何に困っているのか、どのようなKPIを達成したいのかをヒアリングすることに時間をかけている。お客様によってKPIは全然違ってくるので、ただIoTを導入すれば良いわけではない。
木村 人の手によって収集していたデータは標本でしかなかった。今はリアルタイムで膨大なデータを一覧することができる。じゃあデータを見ることで何ができるのか、そこをまだまだ突き詰めて考えていかなければならない。
スマートファクトリーの可能性
藤元 今後自社のスマートファクトリーをどのように展開させていきたいか。
大谷 こういった取り組みには終わりがないので、継続することが何よりも重要。継続していく中で事業環境は変化していく。その時に過去の物事を全て是として見ないこと、掲げた目標を達成するために経営者から社員までが徹底的に自己変革していかなければならない。
林 日本の中小企業は非常に繊細で質の高いものづくりができている。でも儲からない。やはりバックヤードの生産性が非常に悪いのだと思う。だからバックヤードも含めた生産性を上げていくのが、日本のスマートファクトリーになってくる。
青能 改善は尽きることはない。舞台は現場だけではなく、設計や営業、間接部門の生産性向上にも取り組んでいく。グローバルに協業しながら日本版スマートファクトリーの構築に貢献していきたい。
木村 旭鉄工では80ラインの生産性が平均34%上がった。旭鉄工でできたので他の会社でもできないわけがない。ただいきなり導入というのは難しいと思うので、私たちがサポートをしたり、他社さんやコンサルの方と協力しながら多くの中小企業の生産性を向上させていきたい。そのためのソリューションの一つを5月31日に発表するので注目して欲しい。
櫻井 「良いお酒や大吟醸は神秘的なモノ、経験と勘と運によってしか造れないモノ」というのが酒造りの特徴だった。今ではそういったベールに包まれた部分を分析し、データとして蓄積していくことで、安定して高品質なお酒を造れるようになってきた。このシステムをさらに進化させていく。そうすると今度はデータとして扱えない、IoTを否定するような酒造りが生まれるかもしれない。スマートファクトリー化はそういった可能性も秘めている。私たちとしては怖いことでもあるけれど非常に楽しみ。