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建機市場、世界は活況も停滞する日本

技術者不足、国内事業のテコ入れ必死
建機市場、世界は活況も停滞する日本

建機各社に落ち込む国内需要の喚起が求められる(コベルコ建機提供)

 活況が続く世界の建設機械市場で日本市場が停滞している。建機の排ガス規制が強化される前の駆け込み需要に伴う反動減により、建機各社は苦戦を強いられている。ここ数年で顕在化してきた技術者不足の課題も立ちはだかる。海外需要が好調な今、国内事業をテコ入れする必要性が高まっている。国内市場の最前線を追う。

 「建機レンタル会社は悩んでいて、(レンタル会社の)購買動向を読みづらい」―。コベルコ建機の三木健取締役専務執行役員は表情を曇らせる。

 国内市場の動向を左右するのがレンタル会社だ。全国で販売される建機の約3割がレンタルやリース向けで、規制強化をにらんだ駆け込み需要が2017年1月ごろに高まった。

 レンタル会社にとっては一定の台数の建機を確保しておく必要がある。新たな規制に対応する機種も費用がかさみながら購入する一方、レンタル料金には転嫁しにくいという。

 規制の範囲が建機の生産面で、建設現場での利用には影響がない。新規制対応機種の料金を引き上げてしまえば、工事業者は従来規制の機種を利用しようとするためだ。国内で工事が活発化しているものの、レンタル会社が新規制に沿った機種の確保に二の足を踏む理由がここにある。

 日本建設機械工業会(建機工)によると、国内の17年度建機出荷金額統計(補給部品を含む総額)は前年度比0・3%減の9835億円と2年連続で減少した。

 ここにきて建機各社が重視しているのが中古建機市場だ。新車の購入になかなか踏み切れない工事業者でも、中古車なら手が届きやすい。中古車を拡販する商機が広がる。

 日立建機は整備した高品質の中古車を国内で提供している。子会社である日立建機日本(埼玉県草加市)の榎本一雄社長は「中古車の価値を上げる。ビジネスが膨らむ期待感を持っている」と手応えをつかむ。

 コベルコ建機も中古車関連のイベントを開いて需要を取り込む。「作業量は新車と変わらない」(三木取締役専務執行役員)ためだ。

 各社が情報通信技術(ICT)を利用し、建機の稼働状況などのデータを収集することも同市場の拡大に寄与しそうだ。建機が劣化しすぎてしまうのを抑えられ、顧客に的確なタイミングで買い替えを提案できる。各社は需要の掘り起こしを進めており、工事全般をICTで支援する事業でも火花を散らす。

ICT活用、現場支援に軸足


 国土交通省が工事全般に情報通信技術(ICT)を活用する方針「アイ・コンストラクション」を打ち出して2年。建設機械業界に求められる役割が、施工に利用する建機の販売から、工事の総合的な支援に変わってきた。日本キャタピラー(東京都中野区)の佐藤清彦常務執行役員は「(ICTを利用した)情報化施工はまだ始まったところだ」と指摘する。

 建機需要が伸び悩む国内市場で、建機のICT化をはじめとする新技術やサービスの開発が熱を帯びている。先行するコマツが今月から始めたのが、自動運航する飛行ロボット(ドローン)の測量サービス。建設現場での高速データ処理技術で、ドローンが撮影した写真から、3次元(3D)の測量データを約30分で生成する。工事の進捗(しんちょく)管理に役立つ。

 コベルコ建機は現場で必要とされる技術やニーズを取り込むために、ICTに精通した異業種の出身者の採用を進めている。フランスやスウェーデンの企業が提供する油圧ショベルの施工支援技術を国内に展開できたのは、測量機器会社の出身者の知見によるところが大きい。

 また、住友建機は道路の舗装に利用する機械のICT対応を進めている。日本キャタピラーは土砂などの積載量を計測する技術や事故防止対策を訴求する。アイ・コンストラクションで競争軸が変わり、各社がしのぎを削る。

 建機各社にとって、国内の技術者が不足する現状を打開するのが共通の課題だ。コマツは建機の販売とレンタル、フォークリフト事業の子会社3社を統合して、新会社を4月に発足させた。保守サービスの需要も取り込むには、「メカニック(技術系の人材)が大きな戦力」(大橋徹二社長)だからだ。

 新会社には2000人規模の技術者がそろい、他社を上回る体制を整えた。建機とフォークリフトの修理に必要な技術も底上げすることで統合効果が高まり、人手不足に対応できる。また日立建機日本(埼玉県草加市)は17年に比べて新入社員を2倍に増やした。

 建機は現場での修理が求められる。泥やホコリにまみれながらの作業で人材にも敬遠されてしまいがちだ。ただ「顧客の困りごとを解決するので、サービスマン(技術者)を悪く言う顧客はいない」(佐藤日本キャタピラー常務執行役員)という。
 
日刊工業新聞2018年5月23、24日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
技術者を十分に確保するのが難しい状況で各社の模索が続く。 (日刊工業新聞社・孝志勇輔)

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