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高さ350mの木造超高層ビル建設は可能か

住友林業と熊谷組が協業を始動
高さ350mの木造超高層ビル建設は可能か

住友林業がまとめた「W350計画」で建設する木造超高層ビルの俯瞰図

 熊谷組は資本・業務提携先の住友林業と協業に関する八つの分科会を設置し、協業を始動した。2017年11月に提示した協業5分野を、より具体的な8テーマに改めた。このうち「中大規模木造建築分科会」は、高さ30メートルや70メートルの木造ビル建設を検討する。住友林業が木造で高さ350メートルの超高層ビル建設を目指す構想「W350計画」の前段と位置付け、技術課題を洗い出しながら早期の着工につなげる狙い。

 8分科会を4月に設置し、週1回や月2回の頻度で、分科会を開催し議論している。

 例えば、リノベーション分科会は熊谷組が得意な中規模ビルや集合住宅で、住友林業が得意な外壁やエントランス、エレベーターの改修を行い「1棟丸ごと改修」を提案する。

 緑化土木分科会は、ビル周辺で植栽工事の共同提案などを想定。土木分野でチップ販売や木杭の活用も視野に入れる。

 海外建設・開発分科会は熊谷組が実績のある台湾で、高齢者向け有料介護施設や高級集合住宅の事業化につなげる。

 両社の販路を活用するのが、資材流通分科会。熊谷組の鉄骨建方治具「エースアップ」など開発製品と、住友林業の建材を互いの販路で販売し合う。

 森林保全は住友林業が持つ森林に、熊谷組の無人化施工技術などを活用する。林道の整備や木の切り出しを行い、山林事業の生産性向上を目指す。分科会が中心となり、協業を促すことで、熊谷組は5年後のシナジー創出目標である、営業利益60億円の実現に弾みをつける。

日刊工業新聞2018年5月22日



2041年に実現へ


 住友林業は2041年に木造で高さ350メートルの超高層ビル建設を目指す構想「W350計画」をまとめた。高さを追求するだけでなく、多様な生物の住処となるような街「環境木化都市」を目指す。昨年資本提携を結んだ熊谷組も協力する。高い目標にチャレンジする中で技術革新やコスト低減を進めると同時に、国などに法制度の整備を働きかける狙いもある。

 「日本が木造建築物で世界をリードしていくための新たなチャレンジだ」(市川晃住友林業社長)。現在の構想では東京都心の丸の内エリアに地上70階建てのビルを建てることを想定している。内部が純木造の木鋼ハイブリッド構造で、木材を18万5000立方メートル使用。鉄骨造に比べて新築時に22%の二酸化炭素(CO2)排出量を抑えられるとした。

 今後は十分な耐震・耐火性能を持たせるための研究などを進める。すでに3時間耐火部材の開発に着手した。木だけで燃え止まらせる技術を確立し、木造は火災に弱いという懸念を拭い去る。強靱(きょうじん)で均質な樹種も開発する。

 総工費は鉄骨造のおよそ2倍となる約6000億円と試算した。日本の法制度で建てられる木造建築は、2時間耐火の部材を使った場合で14階建てまで。必要な法整備や規制緩和を国や関係機関に働きかける。
日刊工業新聞2018年2月14日
葭本隆太
葭本隆太 Yoshimoto Ryuta デジタルメディア局DX編集部 ニュースイッチ編集長
W350計画では、2020年代前半に高さ70メートルの14階建てビルを建てる方針を掲げています。特に耐震性能をどのように実現していくのかが気になります。

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