「京都―吉野」乗り換えなし。近鉄がフリーゲージトレインの開発に乗り出した
6月以降に推進体制を整備
近畿日本鉄道が軌間可変電車(フリーゲージトレイン、FGT)の開発に着手する。国内のFGTは、レールの幅(軌間)が異なる新幹線と在来線の直通車両を念頭に開発が進められてきた。しかし高速車両では技術的にハードルが高いのが現状。近鉄はエリア内に軌間の異なる路線を抱えており、乗り換えなしで目的地に到達できるFGTを実現できれば、鉄道ネットワークの価値向上に大きく貢献しそうだ。
近鉄は京都駅―吉野駅(奈良県吉野町)間でFGTによる直通特急の運行を目指す。現在は途中の橿原神宮前駅(同橿原市)で乗り換えが必要だ。これまでも軌間変更(改軌)やレール3本で二つの軌間に対応する「三線軌条」を検討したが、決め手を欠いた。
直通列車は乗り換えが不要で時間短縮ができ、心理効果も高い。大都市では他の路線や鉄道会社への直通が新たな通勤・通学流動を生む。新幹線の地方への延伸開業は東京を身近に感じさせ、金沢駅―仙台駅間の臨時新幹線は、観光需要を掘り起こした。京都と吉野の直通特急も、訪日外国人の利用を含め、新たな観光流動を創出する可能性を秘める。
近鉄はFGT開発のため、グループの近畿車両から吉川富雄常務を兼任で、取締役常務執行役員フェローに迎える。着任する6月以降、総合研究所内に推進体制を整え、国土交通省や先行して開発に取り組む事業者らに協力を求める方針だ。実現時期は未定で、まずは技術情報の収集や可能性調査を進める。
FGTはこれまで、九州新幹線長崎(西九州)ルートでの採用を目指し開発が進められた。累計約500億円を投じてきたが、技術を確立できず、同ルートでの展開は事実上、白紙となった。スペイン国鉄では客車で実用化済みのFGTだが、日本は軌間が狭く、モーターなどを搭載する電車であるため、より精密な部品が必要だ。何よりも、目標とした時速260キロメートルという高速走行への対応が実現を困難にしている。
近鉄が計画するFGTは高速走行しないこともあり、現在の知見を開発に生かせれば、基礎的な技術は対応できそうだ。軌間変換装置や駅設備、車両の新造・保守費用などで投資はかさむと見られるが、事業性は直通効果との見合いで決まる。
近鉄は京都駅―吉野駅(奈良県吉野町)間でFGTによる直通特急の運行を目指す。現在は途中の橿原神宮前駅(同橿原市)で乗り換えが必要だ。これまでも軌間変更(改軌)やレール3本で二つの軌間に対応する「三線軌条」を検討したが、決め手を欠いた。
直通列車は乗り換えが不要で時間短縮ができ、心理効果も高い。大都市では他の路線や鉄道会社への直通が新たな通勤・通学流動を生む。新幹線の地方への延伸開業は東京を身近に感じさせ、金沢駅―仙台駅間の臨時新幹線は、観光需要を掘り起こした。京都と吉野の直通特急も、訪日外国人の利用を含め、新たな観光流動を創出する可能性を秘める。
近鉄はFGT開発のため、グループの近畿車両から吉川富雄常務を兼任で、取締役常務執行役員フェローに迎える。着任する6月以降、総合研究所内に推進体制を整え、国土交通省や先行して開発に取り組む事業者らに協力を求める方針だ。実現時期は未定で、まずは技術情報の収集や可能性調査を進める。
FGTはこれまで、九州新幹線長崎(西九州)ルートでの採用を目指し開発が進められた。累計約500億円を投じてきたが、技術を確立できず、同ルートでの展開は事実上、白紙となった。スペイン国鉄では客車で実用化済みのFGTだが、日本は軌間が狭く、モーターなどを搭載する電車であるため、より精密な部品が必要だ。何よりも、目標とした時速260キロメートルという高速走行への対応が実現を困難にしている。
近鉄が計画するFGTは高速走行しないこともあり、現在の知見を開発に生かせれば、基礎的な技術は対応できそうだ。軌間変換装置や駅設備、車両の新造・保守費用などで投資はかさむと見られるが、事業性は直通効果との見合いで決まる。
日刊工業新聞2018年5月18日