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揺れる東芝「原発子会社」はどうなる?

米ウエスチングハウスの保守・サービスは堅調。欧州での新設受注も内定しているが
揺れる東芝「原発子会社」はどうなる?

佐々木社長(現副会長)時代に東日本大震災などがあり、原発事業の戦略転換を迫られた。


欧州ではブルガリアや英国で受注が内定したが・・


 東芝子会社の米原発プラント大手ウエスチングハウス(WH)は、ブルガリアの国営電力会社ブルガリア・エネルギー・ホールディングから原発1基を受注することで基本合意した。受注額は5000億円程度とみられる。2023年ごろの稼働を目指す。受注が内定したのはコズロデュイ原発の7号機。出力は110万キロワット程度を計画している。 

 ブルガリアでは7月下旬に内閣が総辞職したため、WHの受注が正式に決まるのは10月の総選挙で誕生する新政権の承認後になる。東芝など日本の原発メーカーは東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故以降、国内で新設のめどが立たないため、海外での事業拡大を模索している。(2014年08月04日付)

東芝はWHをしっかりマネジメントできるか


 東芝は30日、1月に公表していた英国の原子力発電事業会社「ニュージェネレーション」(ニュージェン)に対する買収に関し、GDFスエズなど親会社2社との間で株式の売買取引が完了したと発表した。総額約1億ポンド(約172億円)で株式60%を取得した。残る40%はGDFスエズが保有する。これにより子会社の米ウエスチングハウス(WH)が製造する新型加圧水型軽水炉(PWR)「AP1000」3基分の受注が内定する。1基目は2024年に稼働する予定で、2、3基目は26年までの稼働を目指す。

 停滞していた原発事業に弾みがつくことになる。ただ関係者によると、英国の原発事業で東芝の第1選択肢は日立製作所が12年に買収したホライズンの案件だったと言われる。最終的に日立側が買収額を900億円近くまで引き上げ、東芝は方針を転換したという。

 ニュージェンの炉型は子会社の米ウエスチングハウス(WH)の新型加圧水型軽水炉(PWR)「AP1000」。一方、ホライズンの炉型は日立や東芝が開発を主導した改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)。自社内での機器製造比率が高く技術の伝承などを考えると、東芝もBWRでの受注をものにしたいところだ。今後は「TVO(フィンランド産業電力)などの案件獲得に全力をあげる」(田中久雄社長)という。

 東芝の原発事業の成長戦略は子会社のWHがけん引してきた。ただ06年の買収後も東芝とWHの経営陣の足並みがそろわないことも多く、最高経営責任者(CEO)も何度か交代。米国などで新規建設がストップし、WHの大株主が株式を売却、その分を東芝が保有したままになっている。

 世界の原発新設案件は、黙っていてプラント発注が来る時代ではなくなった。今回の東芝や日立のように事業会社に直接参画し、計画の初期からコミットするケースも増えそう。それだけ収益化へのリスクも高くなっている。東芝はこれまで以上に、WHのマネジメントににらみをきかす必要がある。(2014年01月16日&2014年07月01日)
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
特に事業主体として参画する英国の案件などは、見直さざるを得ないのではないか。

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