生産現場で“働くママ”に寄り添う!製造業で企業内保育所の設置相次ぐ

トヨタは国内最大級、新日鉄住金は24時間対応

 大手製造業で企業内保育所(託児所)を設置する動きが相次いでいる。工場の稼働に合わせ、公立の保育所では対応できない早朝深夜や休日でも子どもを安心して預けられるため、利用者からは好評だ。人手不足が深刻化する製造業にとって、女性社員の確保は経営の最重要課題の一つだ。各社の取り組みを追う。

 トヨタ自動車は、国内最大級の企業内託児所「ぶぅぶフォレスト」(愛知県豊田市)を4月に開設した。定員は320人。同社が保育施設を新設するのは06年以来4カ所目だが、今回の開設で定員の合計は3倍以上の460人と大幅に増えた。上田達郎専務役員は「生産ラインで働く女性に寄り添うことが1番大きい」と説明する。

 仕事と育児の両立を目指す女性社員の中では、総合職より、工場で働く技能職の定着率改善が課題だ。工場では6時半からの早朝勤務や夜間勤務がある。このため、保育所や学校の標準保育時間である「7時半―18時半」とずれが生じ、「しっかり使ってもらうためには、公的な施設では難しい」(上田専務役員)と開設の意義を強調する。

 同社は、今回の施設で早朝・宿泊保育や工場からのバスでの幼児送迎のほか、病児保育施設の併設も追加した。年度途中での入所も可能とし、早期復職希望者や海外帰任者など幅広い社員の利用を想定する。女性活躍を推進する中、環境整備に万全を期す。

 新日鉄住金は大分製鉄所(大分市)敷地内で運営する保育所「大分どんぐりのもり保育園」(定員30人)で、1月に24時間保育を始めた。製造現場の交代勤務に従事する従業員の子どもが主な対象だ。

 昼夜休みなく稼働する製鉄所の製造現場では、3交代制の勤務体制を敷く。この保育所では、これに合わせて5時半―16時、13時半―24時、21時半―翌8時の3通りの保育標準時間を設けている。

 以前は製造現場を志望する女性が少なかったものの、ここ数年間はこうした職場に配属される新入社員のうち、全社的に2割程度が女性となった。同社は君津製鉄所(千葉県君津市)と八幡製鉄所(北九州市戸畑区)にある保育所でも、希望者がいれば24時間保育を始める用意があるという。

 大分製鉄所の厚板工場に勤務し、24時間保育を利用する河野(かわの)七瀬さんは、「(保育所のおかげで)交代勤務でも働き続けることができる。同じように勇気づけられる人がいたらうれしい。育児も仕事も頑張って、格好いいお母さんになりたい」とほほ笑む。

「仕事に早く戻りたい」将来の管理職候補に


 ホンダは埼玉県和光市の社有地に企業内託児所「わいわいがーでん」を開設し、4月に運営を始めた。従業員の多様な働き方を支援するのが狙い。女性従業員の仕事への早期復帰を支援し、キャリアの断絶という課題を解消する。

 和光市周辺に拠点のある同社や本田技術研究所などの従業員が使える。生後8週間のゼロ歳児から小学校就学前までの子どもが入所でき、定員は30人。同社の保育施設は宇都宮市に次いで2カ所目。従業員が多い一方、保育施設が少ない地域として両市を選んだ。

 同社は3年間の育児休暇制度を備えるが、フル活用すると仕事の空白期間が長くなり、復帰しても周囲に追い付くのが難しくなるケースも増えている。保育所は「仕事に早く戻りたいというママ従業員の環境を整える」(ホンダ)狙いがある。実際にゼロ歳児や1歳児の入所も多いという。

 NTNは、4月に2カ所目の企業内保育所を同社桑名製作所(三重県桑名市)近隣に開園した。産業機械向けのベアリングなどを生産する工場の稼働に合わせ、祝日も子どもを預かり、残業に対応して保育時間を延長できる。また、桑名に近い関連会社の従業員も利用できる。世界に顧客を持つNTNは、多様な人材が活躍できる場を作ることを重視する。企業内保育所の充実はその一環となる。

 同社は09年、磐田製作所(静岡県磐田市)内に最初の保育所を設置。利用率は定員の8―9割に達する。

 桑名の保育所は定員30人のところ、現在の通園は9人だが、利用者は徐々に増える見通しだ。桑名には、女性社員の割合が多い研究開発部門があり、事前調査から未就学児を持つ従業員の7割程度が、保育所を利用する可能性があることを確認していた。

 多様な人材の活躍を後押しする上で、女性の活躍推進は施策の筆頭。ただ、従業員に占める女性の比率はまだ1割ほどと少ない。「女性採用を増やすだけでなく、キャリアを続けてもらいたい」(小沢利之人事部主査)との思いから、女性管理職を育てる研修のほか、出産で退職した従業員の復職制度などを拡充している
NTNの桑名の保育所は地域で生産したヒノキ製遊具(ボールプール)を採り入れた

日刊工業新聞2018年5月3日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
05月12日
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 東洋紡は4月に、企業内保育所「おーきっず」の運営を始めた。従業員の女性比率が38%と、同社の中で高い総合研究所(大津市)に隣接する社宅の敷地内に設けた。子どもを最大20人まで預かる。おーきっずの利用者は「会社の施設内にあり安心して利用できる。送り迎えの負担が少ない」と喜ぶ。また、「子どもがすぐに保育士の先生や友達と仲良くなれて安心した。仕事にスムーズに復帰できた」と好評だ。聞き取りを重ね、各事業所にふさわしい支援を拡大する考えだ。
 同社は、出張時のベビーシッター利用料を会社が全額負担する制度を2017年4月に導入するなど、女性が働きやすい環境作りに取り組んでいる。15年6月には、女性の社員を採用したり管理職の割合を増やしたりするため、人事部に女性社員3人で構成する「女性活躍推進グループ」を立ち上げた。これまで約400人の女性社員に聞き取り調査をし、ニーズの把握に努めた。ベビーシッター利用料を会社が負担する制度は、こうした活動の成果の一つだ。
(日刊工業新聞大阪支社・大原佑美子)

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