遠隔診療いつ実現?医師会「対面が原則」vs.健保組合「医療費減」

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 2018年度診療報酬改定に向け、情報通信技術(ICT)を活用した遠隔診療に関する議論が熱を帯びてきた。医療費の適正化を図りたい健康保険組合などは導入に積極的だが、対面診療が原則と考える医療関係者側は慎重な姿勢を示す。遠隔診療は慢性疾患の治療には適しているとの見方が従来あるものの、今後はさらなるエビデンス(科学的根拠)の積み上げも問われる。

 8日開催の中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)で18年度診療報酬改定に向けた外来医療のあり方に関する議論が行われ、この一環で遠隔診療の現状や今後の課題が示された。厚生労働省は16年に行われた政府の未来投資会議で、遠隔診療や人工知能(AI)を用いた診療支援について、18年度改定での対応を検討するとの資料を提出していた経緯がある。

 こうした動きに、中医協の診療側委員を務める中川俊男日本医師会副会長は「あまりにも拙速じゃないですか」とかみついた。支払い側委員である幸野庄司健康保険組合連合会理事は「ICT(を活用した遠隔)診療は慎重にではあるが進めていくべきだ」と指摘したが、中川委員はこれにも反発。「遠隔診療は対面診療の補完であるという原則に反対なのか」とただした。

 幸野委員は「慢性疾患で病態が安定している人にはやっても良いはずだ」と述べたが、中川委員は「かかりつけ医が患者さんの顔色や息づかい、表情を見ることも含めて医療だ」などと主張。診療側と支払い側の議論は平行線で終わった。

 慢性疾患を対象とする遠隔医療サービスはすでに出てきている。メドケア(東京都新宿区)は、生活習慣病に特化した遠隔診療サービス「ドクターズ・クラウド」を開発した。スマートフォンやウエアラブル端末の活用により、定期的な通院が必要な従来型治療よりも医療費を低減できる。企業や団体の健康保険組合へ提案し、削減できた費用の一部を成功報酬として受け取るビジネスモデルだ。

 医師でもあるメドケアの明石英之社長は、「生活習慣病は遠隔医療に適した疾患だ」と話す。病状が安定している場合が多いことや、急性期疾患と違ってすぐには命に関わりにくいことなどを根拠に挙げた。同社が生活習慣病患者547人を対象に行った意識調査では、そのうち約77%の人が遠隔診療に切り替える意向を示した。通院負担を軽減したい需要は大きいようだ。

 従来、遠隔診療は、離島に患者がいるなどで対面診療が困難な場合に限り行われると考えられてきた。だが厚労省は15年8月に条件を厳しく解釈しなくて良いという趣旨の事務連絡を発出している。未来投資会議の内容なども踏まえると、遠隔診療の本格展開に向けて外堀を埋めつつあると言って良さそうだ。

 ただ、遠隔診療は「慢性疾患でも症状の変動がある病気にはあまり向かない。患者が自分の状態を十分に説明できない精神疾患や小児疾患も現段階では難しい」(明石メドケア社長)側面がある。厚労省は十分なエビデンスを基に診療報酬制度における遠隔診療の扱いを検討する方針を掲げるが、どれだけ多くの賛同や納得を得られるかが試される。
(文=斎藤弘和)

日刊工業新聞2017年2月14日

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昆梓紗
デジタルメディア局DX編集部
記者

先日、「医師に相談できる」系のアプリを開発しているベンチャー数社の話を聞きました。病院に行くべきかどうか分からない、という悩みを解消できる可能性があります。どちらか1つに決めるのではなく、対面医療と遠隔医療をうまく使い分けることが得策と考えます。

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