金融機関の過度なリスクテイクに警笛!

日銀・金融システムリポート「低採算先の借入金が大幅に拡大」

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黒田日銀総裁
 日銀は半年に1度公表する「金融システムリポート」で、金融機関が信用リスクの高さに比べ、低い金利を設定する低採算の貸出先(低採算先)を増やしていると警鐘を鳴らした。金融緩和に伴う低金利や貸し出し競争の激化が背景にあると分析。中でも金融機関は財務基盤の盤石な企業に比べ、相対的に信用力の低い「ミドルリスク企業」向け融資を積極化し、収益力の低下を軽減しているものとみられる。金融機関が過度なリスクテイクに向かえば、金融システムの潜在的な脆弱(ぜいじゃく)性になりうると指摘する。

 金融機関が積極的な融資姿勢を維持する中で、日銀は「貸し出しは中小企業の設備資金向けを中心に増加している」(金融機構局)と認識。こうした動きは経済・物価情勢の改善に寄与し、金融機関の収益力の回復につながるとの見方もある。

 ただ、貸出先企業の財務状況に見合わない低い金利を設定することで、「低収益企業の資金需要を掘り起こしている」(同)のが現状だ。低採算先への融資が中小企業向け貸し出し全体に占める割合は、2010年度の17%から16年には25%に上昇した。足元は金融危機後の不良債権処理問題に直面した00年代と同水準という。

 リポートは「ここ数年で低採算先の借入金が大幅に拡大している」と説明。金利水準が優良企業並みに抑制されているものの、利払い能力は低水準にあるとみる。収益水準は支払利息を若干上回る程度にとどまり、景気悪化や金利上昇などが発生した場合、多くの低採算先で債務不履行(デフォルト)の確率が高まるとしている。

 このため「金融機関はリスクに応じた適正な金利設定を行うとともに、(融資先の破綻に備え積む)貸倒引当金の適切性を検証すべきだ」(同)と提言する。貸倒引当金の引当率が08年のリーマン・ショック並みに上昇すれば、一部地銀では正常先の債権の追加引き当てだけでも、コア業務純益の50%相当の信用リスクが発生する可能性を示唆する。
   

日刊工業新聞2018年4月24日

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 足元では低採算先への貸出比率が、30―40%に達する金融機関も存在するという。こうした金融機関は「信用リスク管理の強化とともに、債務者である企業に対する働きかけ(デットガバナンス)の強化が必要」(同)と指摘する。 このため、低採算先が金融機関の支援を受けつつ、生産性改善やビジネスプロセスの効率化に取り組むことが不可欠と分析。低採算先の財務体質改善が、金融機関の営業基盤の下支えにつながるとみている。 (日刊工業新聞社・長塚崇寛)

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