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仮想通貨は信託法上の財産にあたるか、まだ判断されていない

大久保哲夫・信託協会会長インタビュー
 2018年1月末時点で信託財産残高が、1100兆円を突破した。2年連続で1000兆円の大台を超え過去最高を更新、信託が着々と社会に浸透している。4日に信託協会会長に就任した大久保哲夫三井住友トラスト・ホールディングス社長に、信託業界の展望や課題などを聞いた。

 ―信託業界の状況は。
 「信託財産残高は順調に伸びている。多様な信託商品があるが、増加の要因は大きく二つ。個人の投資信託と機関投資家が信託を使った運用を拡大していることだ。業界に長くいる身としては、これくらい伸びても不思議ではない。信託制度を活用している人はまだまだ少ない。信託の有用性の理解度を高めるのが課題だ」

 ―信託の認知度を高めるには。
 「信託に関わる人のすそ野を広げることだ。実際、信託を活用してもらう機会は増えている。遺言代用信託では生存中は本人のために財産を管理・運用。委託者が亡くなった際、事前に決めた第二受益者に年金や一時金の形で資産を移せるので相続手続きが非常に簡便になる。これは現在15万件くらいの実績があり、非常に伸びている。後見制度支援信託もこれと同様だ」

 ―19年度の税制改正要望の考え方は。
 「これから本格的に議論していく。(父母から孫へ教育資金を一括贈与する際の非課税措置である)教育資金贈与信託が本年度で期限が切れる。同信託は教育機会の充実もあるし、間接的ではあるが経済活性化や消費拡大に寄与しているので、非課税措置の恒久化を要望したい」

 ―信託は事業承継にどう貢献できますか。
 「信託制度を使えば、企業のオーナーが保有する株式について配当を受け取る権利と、議決権行使の権利を分離することが可能だ。よりスムーズに承継できる。オーナーの子どもや親戚だけでなく、第三者に承継しやすくするなど、法的安定性のある信託はもっと活用の仕方があるはずだ」

 ―仮想通貨に対するスタンスは。
 「信託法上の財産にあたるか、まだ判断されていない。社会インフラの新たな枠組みとして基盤整備されれば、顧客の利便性は高まる。ただ投機の対象となり、価格変動がものすごく大きい。マネーロンダリング(資金洗浄)など犯罪悪用リスクもある。これらをクリアできれば、次の展開が見えてくる。仮想通貨の安全性を高めるため、信託を活用するなどのアイデアが出てくるかもしれない」
大久保哲夫・信託協会会長

(聞き手=長塚崇寛)
日刊工業新聞2018年4月27日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
成長著しい信託だが、認知度向上の余地はまだまだある。特に若年層への浸透が課題で、信託協会は大学への寄付講座やホームページの刷新など、矢継ぎ早に手を打っている。政府の成長戦略に掲げられる「貯蓄から資産形成へ」の流れを受け、資産運用や資産管理といった受託業務なども、新たな顧客層開拓のフックとなりそうだ。 (日刊工業新聞社・長塚崇寛)

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