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関西と東海で地銀統合、ライバルは逆に好機?

取引行が一つ減るので入り込める余地ができる
関西と東海で地銀統合、ライバルは逆に好機?

関西みらいFGは関西地銀最大規模に浮上する(設立会見、17年9月、大阪市内)

 4月に関西地域と三重県でそれぞれ新たな地銀グループが発足する。関西地域では4月1日、関西アーバン銀行、近畿大阪銀行、みなと銀行は金融持ち株会社の関西みらいフィナンシャルグループ(FG)の完全子会社となる。関西アーバン銀と近畿大阪銀は、2019年4月をめどに合併する計画だ。関西みらいFGの親会社はりそなホールディングス(HD)で、関西地銀最大規模に浮上する同FGを率いる。

 しかし、関西は京都銀行や滋賀銀行、南都銀行、紀陽銀行など強豪の地銀がひしめく激戦区。主な貸出先の有力な中小企業に魅力ある取引を提案できないと、規模の効果だけで融資を増やすのは難しい。

 プリント基板を組み立てる大日電子(兵庫県尼崎市)の藤井誠司財務部次長は「貸出金利だけで取引を決めはしない。当社をよく知ってもらい、取引先の紹介などで力になってくれるところと付き合いたい」と、借り手の本音を明かす。

 統合や合併により浮いたコストと人材でニーズに応えられるかで、今後の地銀の優劣が決まる。さらに、関西アーバン銀と競合するある地銀幹部は「顧客にとって取引行が合併すれば、取引行の数が一つ減るので、もう一行入り込める余地ができる」と、ライバルの統合を逆に顧客攻略の好機ととらえる。

 香川銀行と徳島銀行、大正銀行を傘下に置くトモニホールディングス(HD)も、大正銀が地盤とする大阪地区で貸出金を2016年以降に約1000億円伸ばした。

 香川銀と徳島銀の豊富な預金量もテコに、大正銀の取引先ネットワークを生かした勢力拡大が奏功している。遠山誠司トモニHD社長は「中小企業の多い大阪を最重要地区に成長する」戦略を描く。

 関西みらいFGの誕生で関西地銀は規模拡大の再編が進むが、中小融資の競合は規模からむしろ「取引の質」にシフトする。

 一方、三重県を地盤とする三重銀行と第三銀行は共同持ち株会社「三十三フィナンシャルグループ」を4月2日に設立し経営統合。両行が完全子会社となる。

 両行の総資産は三重県トップの百五銀行に迫る。三重銀は三重県北部、第三銀は同県中南部をそれぞれ基盤とし補完関係にある。店舗網の重なりは薄いが「重複する店舗の統合は検討する」(岩間弘第三銀行頭取)。2022年度にシナジー効果12億円を見込む。
日刊工業新聞2018年3月30日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
超低金利の長期化やフィンテック(金融とITの融合)の台頭で経営環境が厳しさを増す中で、シナジーの発揮が欠かせない。

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