米国のスマートシティー先進事例をアトランタの街灯に見た!

AT&T、GEの「シティIQ」と呼ばれるデジタルインフラ

 多くの都市でスマートシティーへの取り組みが進む中、通信大手AT&Tは最先端技術を有する企業との協業により生み出したモノのインターネット(IoT)技術を核に、産学官連携で各都市が抱える課題の解決に挑んでいる。2018年2月14日にジョージア日米協会とアトランタ連邦銀行主催のセミナーに登壇したAT&Tの担当者によると、アトランタではIoT装置を活用したスマート道路や遠隔によるインフラ監視の導入を予定しているという。

 米国各都市におけるスマートシティーへの関心は高く、2015年に米国運輸省が主催したスマートシティーチャレンジには全米78の都市がそれぞれのスマートシティー構想を応募している。

 各都市の構想を取りまとめた運輸省によると、温室効果ガスの削減や渋滞緩和、公共交通機関システムの改善など、全米の各都市が同じような課題を抱えていることが明らかになったという。

 これらの課題を抱える各都市に対し、IT企業を中心に多くの企業がソリューションを提案し、自治体と連携してスマートシティープロジェクトに取り組んでいる。

 こうした中、通信最大手のAT&Tは、2016年にIoTの活用で市民により良いサービスを提供する支援を行うスマートシティー・フレームワークを発表し、日立製作所、ゼネラルエレクトリック(GE)、IBMなどと提携して全米15都市への重点的導入を進めている。

 当フレームワークでは、環境・エネルギー問題、交通渋滞、治安、インフラ設備の老朽化、市民生活の向上など都市が抱える多様な問題を一元的に解決するために、最先端技術を有する企業と提携して拡張性の高いプラットフォームを開発し、クラウドネットワークを通じてスマートシティー実現を目指す都市への導入を図ることを目的としている。

 AT&Tのスマートシティー・フレームワークで核となるのが、GE子会社のカレントと共同で開発した「シティIQ」と呼ばれるIoT端末を、既存の街灯などに取り付けるデジタルインフラだ。

 「シティIQ」には高解像カメラ、音声マイク、気温や湿度など環境要素を測定するセンサーとWi-Fi、ブルートゥース(Bluetooth)、GPSなどに対応した通信機能、遠隔操作やアプリとの連動をつかさどるコンピュータが内蔵されている。

 コンパクトで、どんな形の街灯でも簡単に据え付け可能な「シティIQ」により、自治体のスマートシティー化への初期投資負担は軽減される。

 2018年2月14日に、ジョージア日米協会とアトランタ連邦銀行が主催した技術革新ビジネスセミナーに登壇したAT&T・IoTソリューションズ事業スマートシティー部門のベン・イースターリング氏によると、信号機が2~8台の平均的な交差点への「シティIQ」据え付けコストは約500~1,000ドルで、アプリケーション・プログラミング・インターフェイス(API)によるアプリ開発や改良を通じて将来のスマートシティープログラム進化にも対応している。

 AT&Tはベンチャー企業や個人プログラマーによるアプリ開発を積極的に支援するツールやイベントを提供しており、市民参加を通じてスマートシティーが発展することを期待しているという。

実験的に先行導入している都市


 AT&Tのスマートシティー・フレームワークの導入が進む全米15都市の中でも、サービス開始当初からさまざまなソリューションを実験的に先行導入している都市の1つが、アトランタだ。

 アトランタのリード前市長は、2016年のAT&Tデベロッパー・サミットでパネリストとして登壇した際に、「サステナビリティーと治安の向上がアトランタの最優先課題で、AT&Tスマートシティーソリューションズの導入により、これらの課題を解決してより豊かな市民生活を実現することが期待される」と話しており、アトランタはAT&Tやジョージア工科大学と協同でスマートシティー化を着々と進めている。

 アトランタではこれまでに、200の「シティIQ」が市内主要箇所に設置されているLED街灯に据え付けられており、郊外を含む都市圏には300以上のインターネットに接続可能なデジタルインフラ化された信号機が設置されている。

 既にイベント時の駐車場周辺の交通整理や学校周辺における通学時間の速度制限などに利用されているが、さらに、交通量や歩行者状況に合わせて瞬時に信号を調整したり、将来的に自動運転車への情報送信なども行うスマート道路のモデル開発プロジェクトとして、同市はジョージア工科大学と共同で市内の2.3マイル(約3.7キロ)にわたるノース・アベニューをスマート道路とする「スマート・コリドー・プロジェクト」を2017年9月に披露した。

 イースターリング氏によると、現在は4G回線利用のため、信号機から情報を受信して自動運転車が停車するまでの走行距離は4フィート(1フィート=約0.3メートル)だが、将来5G回線による通信が実現すれば、停車までの走行距離は0.1フィートになるという。

 また、AT&Tが電力会社のジョージアパワーと提携して2017年12月から整備を進めている、電線を利用した高速データ送信システム「エアギグ(AirGig)」は、今後普及が見込まれる5G回線の基盤となる予定だという。

 このほか、イースターリング氏の講演では、AT&Tが2018年1月に発表した鉄道や道路の安全性向上に資する新たなソリューション(ストラクチャー・モニタリング・ソリューション)も紹介された。

 米国では多くのインフラが老朽化し、約半数の橋が築後50年以上経過している中、道路や鉄道の劣化状況を目視で確認しているが、この新たなソリューションは、リアルタイムかつ遠隔でインフラを監視できるもので、アトランタを含む幾つかの都市での実験的導入を予定しているという。

 なお、当セミナーでは、イースターリング氏に続いて、AT&Tの戦略パートナーである日立製作所の代表執行副社長などを務め、現在は日東電工取締役の八丁地隆氏も講演に立ち、今日の米国IoTビジネスを支える日系企業テクノロジーなどについて紹介した。
(文=米国・ラマース直子)

【通商弘報】

八子 知礼

八子 知礼
03月30日
この記事のファシリテーター

 昨日も綱島のスマートシティ完成の話について言及したばかりですが、米国では複数都市でフレームワークやIoTデバイスを共通化して広域展開すべく取り組んでいる。交差点などへの設置についても自治体が寛容かつ積極的だ。日本では国交省管轄か地場自治体管轄かで設置交渉が難しかったりエリアが限られたり、電力会社かNTTかで電柱が限られたりと、面で展開する際には常に制約がつきまとう。"シティ"として様々なデバイスやセンサー設置展開するための手続きや制約の排除が関連省庁にも求められる。

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